裁判至要抄(読み)さいばんしようしょう

改訂新版 世界大百科事典 「裁判至要抄」の意味・わかりやすい解説

裁判至要抄 (さいばんしようしょう)

鎌倉初期の勅撰法律書。坂上明基著。1207年(承元1)成立。全33条。《法曹(ほつそう)至要抄》のうち,土地所有権,相続売買貸借法等,民事的規定に修正を加え,新たな法意をうち出したもの。各条項の構成は,前文律令格式等の法源を挙示し,本文(案文)で法意・判断を示す2部構成となっている。同書は,《法曹至要抄》を継承しながらその法意をさらに社会的現実に照応させ,鎌倉幕府法(とくに《御成敗式目》)の形成にも影響を及ぼした。《群書類従所収
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「裁判至要抄」の意味・わかりやすい解説

裁判至要抄
さいばんしようしょう

1207年(承元1)成立の公家(くげ)の法書。編者は明法博士(みょうぼうはかせ)坂上明基(さかがみのあきもと)。おもに売買貸借および親族・相続法の分野の条項を中心とし、各条項ごとに、律令(りつりょう)および格(きゃく)を引用したのち、編者の按文(あんぶん)(意見)を記している。従来は、平安末から鎌倉初期にかけての明法家の律令解釈の恣意(しい)性と律令の変質状態を示すものとされてきたが、按文のなかに示された社会の現実に即した解釈を、むしろ律令法を超える新しい法理の創出として積極的に評価する学説も存在する。『群書類従律令部』所収。

[古澤直人]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「裁判至要抄」の解説

裁判至要抄
さいばんしようしょう

鳥羽上皇院宣うけ,明法家坂上明基(さかのうえあきもと)が1207年(承元元)に撰進した公家法の法制書。33カ条からなり,荒地の開発・出挙(すいこ)・売買・相続など,財産関係の項目を多くたてる。事書・律令格式の条文・撰者の案文からなり,逸文を多く含む。祖父明兼撰の「法曹至要抄」を踏襲しながら,悔返(くいかえし)権については「御成敗式目」に近く,時流にあわせた法解釈も行われている。鎌倉中期の陽明文庫本が善本。「群書類従」所収。

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