行省(読み)こうしょう(英語表記)Xíng shěng

精選版 日本国語大辞典 「行省」の意味・読み・例文・類語

こう‐しょう カウシャウ【行省】

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デジタル大辞泉 「行省」の意味・読み・例文・類語

こう‐しょう〔カウシヤウ〕【行省】

《「行中書省」の略》中国代の地方行政機関河南陝西せんせい四川甘粛遼陽江浙こうせつ江西湖広雲南嶺北の10区域に設置され、その地方財政民政軍政を統轄した。現在の省の名称起源とされる。

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改訂新版 世界大百科事典 「行省」の意味・わかりやすい解説

行省 (こうしょう)
Xíng shěng

中書省の略。中国元代の官制に特有な中央の出先機関。元は広大な版図を治めるため,腹裏(現在の内モンゴル・河北・山西・山東のほぼ全域)を中書省で直轄し,その他の地域を10の区画(河南・陝西・四川・甘粛・遼陽・江浙・江西・湖広・雲南・嶺北)に分け,それぞれ行中書省を置いた。最初は両者に官制上の上下関係はなく,中書左丞相や中書平章政事の肩書を帯びた大臣が臨時に地方に派遣され,当地の軍事行政・財政を統轄した。時代が下るとともに常設官庁となり,長官の肩書も〈某々行省平章政事〉のように変化し,地方政府の側面を強めていった。行の字を付して地方への臨時的な出張機関を表すのは,すでに南北朝時代に見られるが,元の場合,直接には金代に軍事指揮官が行台尚書省の名で派遣されたことに由来し,特にモンゴル侵入下の混乱した華北で大小の在地軍閥が行省を自称したのを継承する。モンゴル時代から元朝前半期までの大規模な軍事行動の際,前線で全権を委任された軍事指令部が多く行省と称した。一方これとは別に,属領統治のために設けられた出先機関も行省と称した。太宗時代(1229-41),華北統治を担当した燕京行省がその最初で,憲宗時代(1251-59)には全属領を三分して三つの行省を設置した。元代中期以降の行省は両方の性格を引き継ぎ軍事・行政に幅広い権限を持った。明以後の省はこれに由来し,府・州の上の最大の行政区画となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行省」の意味・わかりやすい解説

行省
こうしょう

中国、元(げん)代の地方統治機関である行中書省(こうちゅうしょしょう)の略称、通称。元代では中央の最高統治機関である中書省が腹裏(ふくり)とよばれた河北、山東、山西地方を直轄したが、その他の地方は、河南江北、江浙(こうせつ)、江西、湖広、陝西(せんせい)、四川(しせん)、遼陽(りょうよう)、甘粛(かんしゅく)、嶺北(れいほく)、雲南の10地方に分け、それぞれに中書省の出先機関として行中書省を配置し、中書省と同じように下級の統治機関を統轄させた。河南江北の場合を例にとると、正式には河南江北等処行中書省、略して河南行省、河南省とよばれた。行省は、明(みん)代にも継承されたが、まもなく布政使司(ふせいしし)と改められた。行省の略、省はその俗称として用いられ、清(しん)代に及んだ。今日の中国の省の起源は、元代の行省にある。

[海老澤哲雄]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「行省」の解説

行省(こうしょう)

元代の地方統治機関。行中書(こうちゅうしょ)省の略。嶺北,遼陽,甘粛,陝西(せんせい),四川,河南,江西,湖広,江浙(こうせつ),雲南の10地域に置かれ,のち高麗(こうらい)にも設けられた(征東行省)。これに対して河北,山東,山西,内モンゴルは腹裏(ふくり)と呼ばれて中書省に直轄された。行省は中書省とともに皇帝に直属し,その地域の財政,民政,軍政などにわたって広い権限を有した。明以後の地方行政の最大区画である。「省」は,元代の「行省」に由来している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行省」の意味・わかりやすい解説

行省
こうしょう
Xing-sheng; Hsing-shêng

中国,元の中央政府である中書省の地方出先機関。行中書省の略。元の太宗 (オゴデイ ) 時代におかれた燕京行省に始り,元の世祖フビライ・ハン時代に官制として定着。管区内の行政,軍事,司法その他監察権以外のすべてを委任され,同時に地方行政区画の最高単位として路府州県を統率。長官は平章政事。元時代は,中書省の直轄地を除き行省に区画されていた。現代中国の省は,それが継承されたもの。

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百科事典マイペディア 「行省」の意味・わかりやすい解説

行省【こうしょう】

中国,元代の地方統治機関。行中書省の略。現代中国の地方行政区画〈省〉の起源。元代には中央官庁として中書省があり,地方にはその出張所として行中書省が設けられた。外征時には,〈征日本行省〉のように臨時に行省の設けられたこともある。

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旺文社世界史事典 三訂版 「行省」の解説

行省
こうしょう

行中書省(元)

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世界大百科事典(旧版)内の行省の言及

【元】より

…この点,遊牧国家に共通する粗放な政治組織の中に属領とはいえ,先進的な定住民国家の官制が導入されることによって,モンゴル帝国の統治制度は大きく前進したわけである。十路徴収課税所をはじめとするこの種の属領施設は続く憲宗朝に降って,ついに中央政府の現地出張機関たる3行省(燕京,ビシュバリク,アム川)の下に統轄されるまでに至るのであるが,しかしまだこの段階では行省は朝廷の下部機関にすぎず,したがってカラコルム政府は依然として帝国政治の主座を堅持していた。カラコルム政府と行省とのあいだにその地位の転換が生じるのは,次代世祖朝を待って初めて実現するのである。…

【省】より

…省の原義は宮中のことで,魏・晋のころから禁中におかれた天子の秘書室を中書省,尚書省などと呼ぶようになった。13世紀,モンゴル王朝は支配領域の拡大とともに,中央政府中書省の出先機関として行中書省,略して行省を各地に置いた。これが南宋の併合ののち,広い行政区域を持つ独立官庁となり,その管轄区域を省と呼ぶようになる。…

※「行省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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