行政手続法(読み)ギョウセイテツヅキホウ

デジタル大辞泉 「行政手続法」の意味・読み・例文・類語

ぎょうせいてつづき‐ほう〔ギヤウセイてつづきハフ〕【行政手続(き)法】

行政運営における公正の確保と透明性の向上を図ることを目的に、制定された法律。行政機関が行う指導や処分、行政機関に対して行う申請等に関して、必要とされる手続きや、行政側に求められる対応等を定める。平成6年(1994)施行。
[補説]平成18年(2006)の改正で、行政機関が政省令等を制定する際に、案を公示して広く一般から意見を公募する、パブリックコメント意見公募手続)の制度が設けられた。

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精選版 日本国語大辞典 「行政手続法」の意味・読み・例文・類語

ぎょうせい‐てつづきほう ギャウセイてつづきハフ【行政手続法】

〘名〙 許認可等の申請に対する処分の手続、営業免許停止等の不利益処分の手続、行政指導の手続等に関して、公正・透明な行政運営を目的として定めた法律。平成五年(一九九三)制定。

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改訂新版 世界大百科事典 「行政手続法」の意味・わかりやすい解説

行政手続法 (ぎょうせいてつづきほう)

日本の行政法では,行政決定は行政庁が専決的に行い,その決定の相手方等の手続的権利事後行政争訟の段階で保障すれば足りるとされてきた。しかし,行政決定が行政庁が集積している専門的知識・経験にもとづく裁量にゆだねられるとしても,その裁量判断がどのような基準にもとづいて行われるのか,どのようにして基礎事実を認定するのかが明らかにされていないと,公正な手続として国民の信頼を得ることはできない。特に,日本では行政決定の過程でさまざまな行政指導が行われており,行政決定の手続の不透明さに疑問がもたれていた。

 行政手続法は,英米法においてアメリカ合衆国憲法上の適正手続デュー・プロセス・オブ・ロー)やイギリスの自然的正義原則(Natural Justice)にもとづいて判例法として早くから確立し,立法化されていた。日本に行政手続の考え方は第2次大戦後に取り入れられたが,最近までは個別の法律の中に必要に応じて規定するにとどまり,諸外国のように統一的な行政手続法はなかった。しかし,行政手続の意義を認める最高裁判所判決など判例が形成されてきたことや,近年,日本の許認可行政などの行政決定過程の公正性と透明性を求める声が高まってきたことなどの社会状況を背景にして,1993年に日本の行政法の歴史上はじめて行政手続法が制定された。

 行政手続は,大別すると公正取引委員会の審判手続のように司法手続に近い慎重な手続を求める事実審型聴聞と都市計画法が定める公聴会のような陳述型聴聞があるが,行政手続法は事前行政手続のすべてを定めるのではなく,さまざまな経緯から,行政決定過程の現状において行政の公正性,透明性について問題の多い許認可等の申請に対する処分,不利益処分および行政指導について,それぞれ共通的な手続を定めるにとどめている。その内容は,申請に対する処分については審査基準の作成とその公表,標準的処理期間の決定とその公表,申請を拒否する処分をする場合の理由の提示等を定め,不利益処分については処分基準の作成,処分手続として聴聞または弁明の機会等を定めている。また行政の不透明性のシンボルとして内外からの不満の強かった行政指導については,相手方の協力によってのみ実現されるものであるとする行政指導の限界を明確にし,相手方の意思に反した行政指導の継続の禁止,処分権限にもとづく行政指導の事実上の強制の禁止等の一般原則を定めるとともに,相手方に対して行政指導の趣旨,内容,責任者を明確にし,相手方から指導内容について要求がある場合の書面の交付等の行政指導の方式について定めている。その他行政実務で問題の多い届出についても定めている。同法は地方自治を尊重する立場から,行政手続条例の制定については各地方公共団体の立法措置に委ねている。
公聴会 →市民参加 →聴聞
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百科事典マイペディア 「行政手続法」の意味・わかりやすい解説

行政手続法【ぎょうせいてつづきほう】

行政手続の統一化によって,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,国民の権利利益の保護に資することを目的とする手続法(1993年11月公布,1994年10月施工)。許認可申請手続をわかりやすく迅速にする,免許停止などの不利益処分に際して弁明や聴聞の機会の確保,行政指導の明確化と従わない者への不利益扱いの禁止,届出に対する不当な受理拒否の禁止,不利益処分の際の理由の提示などを定め,許認可行政や行政指導の透明性の向上を期した。日米構造協議などで諸外国から日本の行政の不透明性に対する批判が強まったことも長年の課題であったこの法の立法化の背景にある。→規制緩和行政改革
→関連項目行政法聴聞会不利益処分

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行政手続法」の意味・わかりやすい解説

行政手続法
ぎょうせいてつづきほう

行政手続の公正のために制定された法律。膨大な許認可行政や行政指導は,日本の行政の不透明性の象徴として日米経済摩擦の重要なテーマとなっているだけでなく,政・官・財癒着の温床とも指摘されてきた。これらに対する法整備は 1964年の第1次臨時行政調査会でも問題とされていたが,91年になって第3次行政改革推進審議会答申にそう形でようやく法案化され,細川政権下の 93年秋に成立し,94年 10月に施行された。内容は,(1) 許認可の手続,(2) 営業免許停止など不利益処分の手続,(3) 行政指導の手続が3本の柱で,(1) については審査基準を公表し,審査期間を設定,拒否した場合は理由を開示すると定めた。また行政指導については,趣旨,内容,責任者の3点を明確化し求められれば書面を交付。従わなくても不利益な扱いはしないとしている。

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知恵蔵 「行政手続法」の解説

行政手続法

行政手続法は、1993年11月5日に国会で可決、同月12日に公布され、94年10月1日から施行された。行政手続法は、許認可権の行使(行政処分)における標準処理期間の設定、許認可申請を拒否する際の理由の開示、不利益処分を行う際の弁明や聴聞の機会の保証を定めている。一方、直接の許認可権限の行使でない行政指導についても、その内容と責任者を明確にすること、行政指導に相手が従わなかったことを理由とする不利益な取り扱いの禁止、口頭での行政指導に書面の交付要求があれば従うこと、などを定めた。

(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)

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