しゅう【衆】
[1] 〘名〙
① 多数の人。大勢の人。また、三人以上の称。しゅ。
※観智院本三宝絵(984)中「衆の中にありて聴聞をす」
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉一一「寡を以て衆(シウ)に当り」 〔易経‐師卦〕
② ある集団をかたちづくる人々。集団の構成員。しゅ。
※源氏(1001‐14頃)乙女「せまりたる大学のしうとて笑ひあなづる人もよも侍らじ」
※今昔(1120頃か)二八「蔵人所の衆・出納・小舎人に至るまで」
④ 人。お人。人々。しゅ。
※歌舞伎・廓の花見時(助六)(1764)「その衆様は揚巻様とは申しませぬか」
[2] 〘接尾〙 人を表わす名詞などに付いて、親愛、尊敬の意を添える。しゅ。
※虎明本狂言・河原太郎(室町末‐近世初)「いつもの御だんなしうで御ざるに」
[3] 〘接頭〙 名詞の上に付いて、多くの、多数の、の意を添える。
※自由之理(1872)〈中村正直訳〉四「もし衆工人、斉しく日曜日に、作工を做ば」
しゅ【衆】
[1] 〘名〙
※伝光録(1299‐1302頃)釈迦牟尼仏「暫時も衆のために説法せざることなし」
※宇津保(970‐999頃)祭の使「あるしゅ、藤英、くわばかりなくせさるを見て」
※平家(13C前)五「彼文覚と申は、もとは〈略〉上西門院の衆(シュ)〈高良本ルビ〉也」
※雑俳・軽口頓作(1709)「さあ爰で・ふぐりのない衆待て居や」
⑤ (saṃgha の訳語) 修行中の僧たち。
大衆(だいじゅ)。
※正法眼蔵(1231‐53)一顆明珠「雪峰も衆のなかにすぐれたりとおもひて」
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「nhôbǒxuua(ニョウバウシュワ) コレヲ マコトニ ウケイデ」
し【衆】
[1] (「しゅう(衆)」の変化した語) 何人かの人。多くの人。人たち。
※
洒落本・仕懸
文庫(1791)二「いいへ、お店のしじゃアござりやせん」
[2] 〘接尾〙 人を
類型としてとらえた語に添えて、やや丁寧な
気持を含ませていう。人たち。方々。「子ども衆」「
男衆」「おなご衆」など。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「衆」の意味・読み・例文・類語
しゅう【衆】
[名]
1 多くの人。大ぜいの人。衆人。「衆に先んずる」
2 人数の多いこと。集団。「衆を頼んで事を起こす」⇔寡。
3 ある集団を形づくる人々。しゅ。「若い衆」「近在の衆」
4 「所の衆」の略。
[接尾]人を表す名詞に付いて、複数の人を尊敬や親愛の意を込めて言い表す。古くは単数の人にも用いた。しゅ。「旦那衆」「観客衆」
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世界大百科事典内の衆の言及
【僧】より
…とくに男性を僧とよぶのに対し,女性は尼(あま)とよび,あわせて僧尼ともいう。〈僧〉とはサンスクリットのサンガsaṃghaに対する音写語で,僧伽(そうぎや)とも書き,衆,和合衆と訳す。サンガは元来,集団,共同体の意味で,修行者の集り,教団を指すが,中国では転じて個々の修行者を僧とよぶにいたった(その複数形をあらわす僧侶もまた,日本では個人を指す語に転化した)。…
【同名衆】より
…室町時代末期,同じ苗字を持ち行動をともにした武士の集団。平安時代の後期から鎌倉時代にかけて,武士は惣領を中心に武士団を形成し,中には一族が党という組織を作ることもあったが,室町時代になると党結合は弱くなり,規模もしだいに小さくなり,それとともに党にあたる語にも衆という語が用いられるようになった。たとえば戦国時代では,美濃三人衆,山家三方(やまがさんぼう)衆,九一色(くいしき)衆,武川(むかわ)衆,那須衆,三好三人衆等の衆組織が有名である。…
※「衆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報