蟷螂の斧(読み)トウロウノオノ

デジタル大辞泉 「蟷螂の斧」の意味・読み・例文・類語

蟷螂とうろうおの

カマキリが前あしを上げて、大きな車の進行を止めようとする意から》弱小のものが、自分力量もわきまえず、強敵に向かうことのたとえ。
[類語]逆らう盾突く反抗抵抗歯向かう手向かう抗する立ち向かう窮鼠猫を噛む

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「蟷螂の斧」の意味・読み・例文・類語

とうろう【蟷螂】 の 斧(おの)

三教指帰(797頃)下「盍擁虎豹之鉞、拉蟷蜋之斧
※歌舞伎・善悪両面児手柏(妲妃のお百)(1867)三幕「此の雷震が所持なす鏡、取らんなぞとは及ばぬ事、譬にも言ふ蟷螂(タウラウ)の、斧(ヲノ)引導渡してくれう」

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故事成語を知る辞典 「蟷螂の斧」の解説

蟷螂の斧

無謀で、身のほどをわきまえない行いをすることのたとえ。

[使用例] 柴田なぞが、愚意をもって筑前を謀らんなどは笑止の沙汰じゃ。見ておれ。蟷螂の斧とは、このことぞ[吉川英治新書太閤記|1939~45]

[使用例] たとえ彼の方に、正当な理由があったにしろ、売春斡旋という不名誉な罪名の前では、しょせん蟷螂の斧であった[梶山季之*女の警察|1967]

[由来] 「荘子じんかんせい」に出てくる、きょはくぎょくという賢者のことばから。紀元前六世紀ごろ、中国の春秋時代、えいという国でのこと。太子のお守り役に任命されたある人物が、太子が凶暴な性格であることを知って、どうしたものか蘧伯玉に相談をしました。すると蘧伯玉は、「とうろうを知らざるか、ひぢを怒らして以てしゃてつに当たる(ご存じないですか、前脚をふりあげて大きな車に立ち向かっているカマキリのことを)」と言って、身のほど知らずのことはせず、相手に合わせていくのがよいでしょう、と諭したということです。

[解説] ❶昆虫の世界では圧倒的な強者、カマキリが前脚を振り上げる雄壮な姿も、大きな車を前にするととても小さく見えてしまいます。これは、同じ「荘子」の「天地」や、「韓詩外伝―八」「淮南子じんかん訓」などでも語られていて、人気のあるたとえ話だったようです。中には、「強敵を恐れない勇敢な姿」のたとえとして使われている例もあります。❷「蟷螂の斧」の形では、「文選」に収められた「えんしょうの為に予州げきす」に使われているのが、古い例。なお、漢文では、「蟷螂」は「螳蜋」「螗蜋」などとも書かれます。

〔異形〕蟷螂が斧/蟷螂が斧を以てりゅうしゃに向かう。

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