蝶々夫人(読み)チョウチョウフジン(英語表記)Madama Butterfly

デジタル大辞泉 「蝶々夫人」の意味・読み・例文・類語

ちょうちょうふじん〔テフテフフジン〕【蝶々夫人】

原題Madame Butterfly
米国の小説家ロングの短編小説。1898年発表。長崎舞台に、米国海軍士官ピンカートンと結婚した日本娘、蝶々悲劇を描く。のちベラスコにより戯曲化、さらにプッチーニによりオペラ化された。
原作とするプッチーニ作曲のオペラ。全2幕。1904年ミラノ初演。第2幕のアリア「ある晴れた日に」は特に有名。マダムバタフライ。

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改訂新版 世界大百科事典 「蝶々夫人」の意味・わかりやすい解説

蝶々夫人 (ちょうちょうふじん)
Madama Butterfly

プッチーニ作曲の2幕3場のオペラ。《マダム・バタフライ》の名でも親しまれている。L.イリカとG.ジャコーザの台本により,1904年ミラノのスカラ座で初演。アメリカの作家ロングJohn Luther Long(1861-1927)が,明治中期の長崎を舞台に書いた小説《蝶々夫人》(1898)を,D.ベラスコが戯曲化したものに基づいている。長崎に寄港したアメリカの海軍士官ピンカートンと結婚した芸者蝶々さん〉は,帰国したピンカートンが戻るのを子どもとともに待っている。3年後にピンカートンは夫人を伴って訪れ,裏切られたと知った蝶々さんは子どもを残し自害する。悲運薄幸な心の美しい女性〈蝶々さん〉を主人公にしたプリマ・ドンナ・オペラ。

 フランス印象主義音楽の影響を受けた全音音階を多用する一方,日本旋律随所に採り入れてある。悲劇のヒロイン〈蝶々さん〉に対する同情とエキゾティックな旋律によって全体を盛り上げている。〈蝶々さん〉の歌う《ある晴れた日》は特に親しまれている。日本初演は1921年(大正10)ロシア歌劇団によって全曲,帝国劇場で上演。蝶々夫人役として国の内外名声を博した歌手三浦環,原信子らがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蝶々夫人」の意味・わかりやすい解説

蝶々夫人
ちょうちょうふじん
Madame Butterfly

イタリアの作曲家プッチーニのオペラ。二幕。1904年ミラノのスカラ座で初演。ジョン・ルーサー・ロングによる同名の小説(1897)が、デイビッド・ベラスコによって戯曲化(1900・ニューヨーク初演)され、これをもとにルイジ・イリッカとジュゼッペ・ジャコーザがイタリア語の台本を作成。物語は同時代の長崎を舞台に展開する国際結婚の悲劇。周囲の反対を押して芸者蝶々さんと結ばれた海軍士官ピンカートンは、彼女と子供を残してアメリカに帰国する。3年後、彼を待ちわびる蝶々夫人の前にピンカートンが妻を伴って現れ、子供を引き取ると申し出、誇りを傷つけられた彼女は自殺して果てる。女主人公の歌唱(アリア「ある晴れた日に」など)を中心に全体を構成したいわゆるプリマドンナ・オペラであり、歌手には高度な技量と体力が要求される。異国情緒を演出するために日本の民謡や童唄(わらべうた)などを数多く引用しているが、それがプッチーニ独自の語法に溶け込んで円熟した作品となっている。わが国では1921年(大正10)に来日のロシア歌劇団が初演。邦人による初演は30年(昭和5)の東京劇場で、日本楽劇協会によって行われた。

[三宅幸夫]

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百科事典マイペディア 「蝶々夫人」の意味・わかりやすい解説

蝶々夫人【ちょうちょうふじん】

プッチーニ作曲のオペラ。原題《Madama Butterfly(マダム・バタフライ)》。米国の劇作家D.ベラスコ〔1853-1931〕の戯曲(1900年)を原作として1901年−1903年に作曲され,1904年ミラノのスカラ座で初演。長崎を舞台に,主人公の美しい芸者〈蝶々さん〉と米海軍士官ピンカートンとの結婚,およびその悲劇的結末を描く。2幕3場。アリア〈ある晴れた日に〉がよく知られる。→三浦環
→関連項目ハミング藤原歌劇団

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蝶々夫人」の意味・わかりやすい解説

蝶々夫人
ちょうちょうふじん
Madama Butterfly

G.プッチーニ作曲,L.イリカと G.ジャコーザの台本による2幕3場のオペラ。作曲年は不明であるが,1904年2月 17日イタリアのミラノで初演。日本初演は 21年。長崎を舞台に,アメリカの海軍士官に裏切られた蝶々夫人の悲劇を扱い,当時のヨーロッパ音楽の異国趣味を反映している。

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デジタル大辞泉プラス 「蝶々夫人」の解説

蝶々夫人

イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのイタリア語による全2幕のオペラ(1904)。原題《Madama Butterfly》。長崎を舞台に、米海軍士官ピンカートンと結婚した芸者の蝶々の悲劇を描いた作品。

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世界大百科事典(旧版)内の蝶々夫人の言及

【ジャコーザ】より

…彼の作風の変化は,後期ロマン主義からスカピリアトゥーラ派の動きを経てベリズモに至る19世紀後半の文学的状況をそのまま反映している。なお,プッチーニのオペラ《マノン・レスコー》(1893),《ラ・ボエーム》(1896),《トスカ》(1900),《蝶々夫人》(1904)の台本も手がけた。【鷲平 京子】。…

【プッチーニ】より

…1884年最初のオペラを発表。93年3作目のオペラ《マノン・レスコー》で成功を収め,《ラ・ボエーム》(1896),《トスカ》(1900),《蝶々夫人》(1904)と傑作を書き続け,《トゥランドット》(未完。F.アルファーノが完成させて1926年初演)まで10曲のオペラを作曲した。…

【ベラスコ】より

…19世紀末から20世紀にかけての劇壇で大いに力を発揮した。戯曲では,プッチーニのオペラの原作となった《蝶々夫人》(1900)や《黄金の西部の娘》(1905)が有名だが,彼の作品は文学的には高く評価されていない。【喜志 哲雄】。…

※「蝶々夫人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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