蛤・文蛤・蚌(読み)はまぐり

精選版 日本国語大辞典 「蛤・文蛤・蚌」の意味・読み・例文・類語

はま‐ぐり【蛤・文蛤・蚌】

[1] 〘名〙
① マルスダレガイ科の二枚貝。北海道南部以南に分布し、潮間帯から水深一〇メートルの砂泥底にすみ、地方により養殖もされている。殻はほぼ三角形で、殻長約八センチメートル。表面はなめらかで、色彩は変化に富むが灰色の地に褐色または紫色の放射彩や斑紋(はんもん)のあるものが多い。内面は白色。肉は美味で、吸物・焼き蛤などとし、殻は胡粉(ごふん)や上等の人形の材料にされる。和名は「浜栗(はまぐり)」の意という。近縁種に、殻が碁の白石の最上の材料となるチョウセンハマグリがある。《季・春》 〔二十巻本和名抄(934頃)〕
② ①の貝殻。飴、膏薬(こうやく)などを入れる容器として用いる。また、殻を合わせて、毛抜き代わりにしたり、貝合わせの遊戯に用いたりもする。
山家集(12C後)下「今ぞ知る二見の浦のはまぐりを貝合せとておほふなりけり」
③ (形動) 物事が齟齬(そご)すること。くいちがうさま。「はまぐり」の「はま」と「ぐり」を逆にして、くいちがう意を表わす「ぐりはま」をさらに元にもどしていった語。
歌舞伎桑名屋徳蔵入船物語(1770)二「いや又、此やうに蛤(ハマグリ)な事はない」
④ 女陰、特に若い女性の女陰をいう。
※雑俳・二柱(1743頃)「蛤へ伊勢路で鴫の不調法」
水揚げがすんで一本になった芸妓のこと。〔モダン新用語辞典(1931)〕
⑥ 紋所の名。①を図案化したもの。蛤蝶、丸に三つ蛤、五つ蛤などがある。
⑦ 「はまぐりば(蛤刃)②」の略。
七十一番職人歌合(1500頃か)三番「いつまでか蛤になる小刀のあふべきことのかなはざるらん」
[2] 狂言鷺流旅僧桑名の浜で休んでいると女性が現われ、いま足で踏んでいるのは何かと問う。僧が蛤だと答えると、女は弔いをたのんで消える。僧が在所の者に由来を尋ね、弔いを始めると、蛤の亡霊が女の姿で現われ、成仏の喜びを謡い舞う。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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