蛞蝓(読み)なめくじ

精選版 日本国語大辞典 「蛞蝓」の意味・読み・例文・類語

なめくじ なめくぢ【蛞蝓】

〘名〙
ナメクジコウラナメクジ科等の、殻を持たない陸産腹足類の総称体長三~一〇センチメートル。体は円筒状で柔らかく、表面は粘液でおおわれる。頭部はカタツムリに似て、二対の触角があり、上方の大触角の先端に目がある。右側の触角の後方に空気呼吸を行なう穴があり、口には歯舌(しぜつ)をそなえる。腹面を収縮させて少しずつ這い、銀色に光る粘液の跡をつける。湿った所を好み、野菜や果実を食害する。雌雄同体で、白色の丸い卵をうむ。入梅時など台所付近にみられ、食塩をかけると浸透圧のため体内の水分を多量に失って縮む。コウラナメクジ科は背面に皿状の殻片を持つ。なめくじら。なめくじり。なめくず。《季・夏》 〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※枕(10C終)二六三「いみじうきたなきもの なめくぢ」
② ナメクジ科の陸産腹足類の一種。日本全国の人家などの周辺にすむ。体長約五センチメートル。殻を持たない。体の中央部と両側面に合計三本の黒い縞がある。
[語誌](1)全国に分布する語形の中で、ナメクジ、ナメクジリ、ナメクジラの三種が優勢である。ナメクジリの語形は、この虫が野菜や樹木を「なめてくじる」という民衆語源から生まれたといわれる。ナメクジラは、ナメクジリが「鯨」への類音牽引によって変化した可能性がある。
(2)古くは「かたつむり」と「なめくじ」を区別せず、同じ語形で呼んでいたらしい。「なめくじ」をハダカナメクジ、ハダカナメト、などと呼ぶ地域があるが、これらは「かたつむり」と区別するために「なめくじ」にハダカを冠した語形である。

なめくじり なめくぢり【蛞蝓】

〘名〙
① 「なめくじ(蛞蝓)」の異名。《季・夏》
※石山寺本法華経玄賛平安中期点(950頃)六「蝮は虺(ナメクヂリ)にして博さ三寸なり」
※俳諧・猿蓑(1691)二「五月雨に家ふり捨てなめくじり〈凡兆〉」
② 「げじ(蚰蜒)」の異名。
[補注]「文明本節用集」には「蚰蜒 ナマクジリ」とある。
[語誌]→「なめくじ(蛞蝓)」の語誌

なめくじら なめくぢら【蛞蝓】

〘名〙 「なめくじ(蛞蝓)」の異名。《季・夏》
※玉塵抄(1563)三「なにたる虫やらなめくじらのやうの類か」
[語誌]→「なめくじ(蛞蝓)」の語誌

かつ‐ゆ クヮツ‥【蛞蝓】

〘名〙 ナメクジの別称。
※薬品手引草(1778)「蛞蝓(クツユ) なめくじり」

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デジタル大辞泉 「蛞蝓」の意味・読み・例文・類語

なめくじ〔なめくぢ〕【蛞蝓】

腹足綱ナメクジ科の軟体動物。陸生の巻き貝であるが、殻をもたず、体長6センチくらい。体は細長く、前端に触角があり、体表は粘液に覆われる。湿った所を好み、野菜などを食害。塩をかけると水分が出るため体が小さく縮む。背面に殻片をもつものは別科のコウラナメクジ。なめくじり。なめくじら。 夏》

なめくじら〔なめくぢら〕【蛞蝓】

ナメクジの別名。

なめくじり〔なめくぢり〕【蛞蝓】

ナメクジの別名。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「蛞蝓」の解説

蛞蝓 (ナメクジ)

学名:Incilaria bilineata
動物。ナメクジ科の無殻の陸生貝類

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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