虫売(読み)むしうり

精選版 日本国語大辞典 「虫売」の意味・読み・例文・類語

むし‐うり【虫売】

[1] 夏から秋にかけて、蛍や鈴虫などの虫を売ること。また、それを業とする人。《季・秋》
歌舞伎小栗十二段(1703)三「小栗は小姓二人連れ虫売姿に様を変へ」
[2] 歌舞伎所作事。富本清元。初世桜田治助作詞。名見崎徳治作曲。天明元年(一七八一江戸市村座初演。本名題連理橘(まいらせそろれんりのたちばな)」。白井権八の隠れ家へ虫売と灯籠売がきて、商売物の言い立てや、七夕由来を物語る。

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改訂新版 世界大百科事典 「虫売」の意味・わかりやすい解説

虫売 (むしうり)

江戸時代には6月ころから,市松模様の屋台にさまざまな虫籠をつけた虫売が街にあらわれ,江戸の風物詩の一つであった。《守貞漫稿》には,〈蛍を第一とし,蟋蟀(こおろぎ),松虫,鈴虫,轡虫(くつわむし),玉虫,蜩(ひぐらし)等声を賞する者を売る。虫籠の製京坂麁也。江戸精製,扇形,船形等種々の籠を用ふ。蓋(けだし)虫うりは専ら此屋体を路傍に居て売る也。巡り売ることを稀とす〉とある。虫売は6月上旬から7月の盆までの商売で,江戸では盆には飼っていた虫を放す習慣だったので盆以後は売れなくなったという。こうした屋台の虫売のほか,江戸近在の者が粗末な虫籠で虫売にくることもあって,こちらは安価のためよく売れたという。明治時代にも,初夏から初秋にかけての縁日の晩には,間口両翼と軒に市松模様の紙障子をめぐらし,さまざまな形の虫籠を多くならべた虫売が出た。虫の鳴声で耳を聾するほどだったというが,なかには,蛍だけを売る虫屋もあったという。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「虫売」の解説

虫売
(通称)
むしうり

歌舞伎・浄瑠璃外題
元の外題
まいらせ候連理橘
初演
天明1.7(江戸・市村座)

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