虚鈴(読み)きょれい

改訂新版 世界大百科事典 「虚鈴」の意味・わかりやすい解説

虚鈴(霊) (きょれい)

尺八楽古典本曲の一系列。琴古流《真(しんの)虚霊》,西園流・明暗対山流《虚鈴》,明暗真法流《真(しん)虚鈴》《行(ぎよう)虚鈴》《草(そう)虚鈴》など,流派により曲名と内容の異なるさまざまな曲がある。普化(ふけ)尺八起源伝説によれば,中国唐代の奇僧普化禅師は鐸(たく)(大型の鈴)を振り鳴らしつつ辻説法をするのを常とし,その音を慕った者が竹管で鐸音を模して吹奏し,その曲を《虚鐸》と名づけたのが,これらの一連の曲の起源といわれるが,史実としては不明というほかはない。中世末期ないし近世初期に何らかの形の原曲が存在し,伝承系統により多くのバリアンテを生じた可能性は考えられるが,現行の各曲は流派差・個人差がかなり大きいので,推断は難しい。いずれの流派においても,最古の伝承曲とみなされ,《霧海篪(むかいぢ)》《虚空(こくう)》とともに〈古伝三曲〉などと呼ばれて,特別に尊重すべき秘曲とされている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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