虎を描きて犬に類す(読み)とらをえがきていぬにるいす

精選版 日本国語大辞典 「虎を描きて犬に類す」の意味・読み・例文・類語

とら【虎】 を 描(えが)きて犬(いぬ)に類(るい)

猛虎を絵にかいてみても、その真の姿を表現することはできず、まるで犬のように力のないものになってしまう。転じて、力量のないものがすぐれた人の真似をしてかえって軽薄になったり、あまりに高遠なものを求めて、かえって不成功に終わったりすることのたとえにいう。
仮名草子浮世物語(1665頃)三「たまたま誠の賢人あれども、虎(トラ)を画(ヱ)がきて狗(イヌ)に類(ルイ)する如く繕ひ者也と言ひ立つれば」 〔後漢書馬援伝〕

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故事成語を知る辞典 「虎を描きて犬に類す」の解説

虎を描きて犬に類す

豪快な人物のまねをしようとしてその通りにはなれず、粗暴で軽々しい人間になってしまうことのたとえ。転じて、高い理想を追い求めて失敗に終わることのたとえ。

[使用例] 口の悪い劇評家なぞから、深井の虎は文字通りに、虎を描いて猫に類するなぞとわれてはしゃくだ[久米正雄*虎|1918]

[由来] 「後漢書えん伝」に見えることばから。一世紀の中国、後漢王朝の時代。将軍の馬援は、甥たちがやくざな者たちと付き合っていることを聞き、注意する手紙を送りました。その中で、りょうという豪快な言動で知られた人物を挙げて、「彼のまねをしようとして失敗すると、軽々しく粗暴な人物になってしまう。『虎を描きて成らずしてかえって犬に類す(虎の絵を描こうとして失敗して、犬みたいになってしまう)』というやつだ」と述べています。

[解説] この手紙の少し前の部分からは、「鵠を刻して家鴨に類すという故事成語も生まれています。

〔異形〕虎を描きて猫に類す。

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