虎が雨(読み)とらがあめ

精選版 日本国語大辞典 「虎が雨」の意味・読み・例文・類語

とら【虎】 が 雨(あめ)

陰暦五月二八日に降る雨。建久四年(一一九三)五月二八日、源頼朝富士裾野で狩りを行なった時、曾我兄弟が仇敵工藤祐経を討って父の仇(あだ)を報じたが、兄十郎祐成は討死する。その祐成の愛人、遊女虎御前がこれを悲しんで泣く涙が雨になって降ると伝えられる。虎が涙雨。虎が涙。《季・夏》
※俳諧・桜川(1674)夏「なくやなみだ詩吟すれば虎があめ〈如粋〉」

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デジタル大辞泉 「虎が雨」の意味・読み・例文・類語

とら‐が‐あめ【虎が雨】

陰暦5月28日に降る雨。この日曽我祐成が斬り死にし、それを悲しんだ愛人の虎御前とらごぜんの涙が雨となったといわれる。曽我の雨。虎が涙。 夏》「寝白粉香にたちにけり―/草城

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「虎が雨」の意味・わかりやすい解説

虎が雨
とらがあめ

曾我の雨,虎が涙ともいう。旧暦5月 28日に降る雨をいう。この日は曾我兄弟仇討ち決行の日で,曾我十郎祐成に愛された大磯の遊女虎御前が,十郎の死を悲しんで流す涙が雨となって降るというもの。もともと5月 28日の前後は,田の神を送るさなぶりの祝いのためにも雨が待たれ,たとえ数滴であれ,この日には雨が降ると伝えられた。しかし,この雨が虎御前と結びつけられたいわれは明らかでない。おそらく仇討ちの日が大雨であったとされること,また曾我狂言における虎御前の貞女ぶりが涙雨のイメージを呼んだことなどによると思われる。

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世界大百科事典(旧版)内の虎が雨の言及

【雨】より

… 七夕などの節日や神社の祭礼の日など一定の日に必ず雨が降るという伝承も各地にある。旧5月28日は曾我兄弟のあだ討ちの日で,この日は必ず雨が降るとされ,〈虎が雨〉と呼ばれている。半夏生(はんげしよう)に降る雨は半夏雨(はんげあめ)と呼ばれ,田植後に田の神が昇天する時の雨とされている。…

【川開き】より

…中でも東京隅田川の川開きは有名で,江戸中期以降趣向をこらした花火が人気を呼び,明治以降も多くの人出が見られたが,1962年に交通安全等の見地からいったん廃止され,のち復活した。江戸時代には陰暦5月28日に行われたが,この日は曾我兄弟の討死に関連して〈虎が雨〉の降るとされた日で,水にまつわる信仰を背景にして始まった行事なのであろう。京都四条河原の納涼も期間内に祇園の御霊会をはさむものであったし,宮城県石巻でのように川の開削者川村孫兵衛の慰霊祭を兼ねるものもある。…

※「虎が雨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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