蘭学階梯(読み)らんがくかいてい

精選版 日本国語大辞典 「蘭学階梯」の意味・読み・例文・類語

らんがくかいてい【蘭学階梯】

江戸中期の蘭学入門書。大槻玄沢著。二巻。天明三年(一七八三成立、同八年刊。上巻に日蘭通商と蘭学勃興の由来を述べ、下巻文字発音・訳法・初歩文法参考書などを説明。蘭学入門書としては最初のもの。

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デジタル大辞泉 「蘭学階梯」の意味・読み・例文・類語

らんがくかいてい【蘭学階梯】

江戸後期の蘭学入門書。2巻。大槻玄沢おおつきげんたく著。天明3年(1783)成立、同8年刊。蘭学の研究意義発達歴史オランダ語の文字・発音・文法・訳例などを説明したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「蘭学階梯」の意味・わかりやすい解説

蘭学階梯 (らんがくかいてい)

江戸期に刊行された最初の蘭語学入門書。大槻玄沢(おおつきげんたく)著。1788年(天明8)刊,2巻。江戸蘭学勃興期に前野良沢についてオランダ語を修めた玄沢が,1785-86年の長崎遊学後に,オランダの原書について蘭学を学ぼうとする学徒のため,蘭語学の基本的事項や学習方法について初心者向きにまとめたのが本書で,広く普及し版を重ねたので異版がある。初版刊行に当たっては,蘭癖大名で蘭学者のパトロンとして知られる福知山藩主朽木昌綱(くつきまさつな)の出版助成を受けている。玄沢の蘭語学学習法は,青木昆陽がひいた基本線を前野良沢が受け継ぎ,それを玄沢が引き継いだ形で行われ,蘭文法と漢文法の類似点に着目し,漢文直読法でない漢文訓読法による漢文学習法が蘭語学の学習に応用され,良沢の著した蘭語学書《和蘭(オランダ)訳文略》《蘭訳筌(せん)》ほかが,随所に利用されている。ただし上巻は蘭語学習には直接関係ない蘭学発達小史で,いわば杉田玄白の《蘭学事始》の簡約版である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蘭学階梯」の意味・わかりやすい解説

蘭学階梯
らんがくかいてい

蘭学の入門書。大槻玄沢(おおつきげんたく)の著。1783年(天明3)玄沢27歳のとき成稿、1788年刊行。上下二巻。蘭学を規定した例言に続いて、上巻は9章からなり、日本・オランダ関係の歴史、蘭学研究の意義と発達の歴史をまとめた総論とし、下巻は16章からなり、ABCの文字から数字、発音、訳法、文法を具体的にかつ簡単に説いたオランダ語への入門書となし、単語、訳例をあげ、冠詞など数種の品詞や文章記号を解説し、参考となる輸入文献を掲げ、学訓を示して結んでいる。出版された蘭学入門書の最初で、江戸時代を通じ蘭学に手を染める者の間に普及し、その影響はすこぶる大きかった。

[片桐一男]

『国書刊行会編・刊『文明源流叢書1』(1913)』『松村明校注『日本思想大系64 洋学 上』(1976・岩波書店)』


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蘭学階梯」の解説

蘭学階梯
らんがくかいてい

大槻玄沢(おおつきげんたく)が著した蘭学入門書。2巻。1788年(天明8)刊。上巻には朽木昌綱・萩野信敏の序文があり,総説・通商・裨益・精詳・慕効・興学・立成・禦侮・勧戒の章からなる。日蘭交渉,渡来物産,諸科学,蘭学の首唱,前野良沢の蘭学研究の苦心や蘭学のすすめなどを説く。下巻は文字・数量・配韻・比音・訓詁・転釈・修学・訳辞・訳章・釈義・類語・成語付訓点並ニ訳文・助語・点例・書籍・学訓の章からなる。オランダ語学習法,訳文作成までの方法,単語・文例の説明,助語や句切り符号の説明,舶来書籍名,蘭学学習一般に関する注意などを説く。巻末に宇田川玄随(げんずい)・桂川甫周(ほしゅう)の跋文を付す。まとまった最初の蘭学入門書として大きな影響を及ぼした。「日本思想大系」所収。

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百科事典マイペディア 「蘭学階梯」の意味・わかりやすい解説

蘭学階梯【らんがくかいてい】

蘭学楷梯とも記。大槻玄沢(おおつきげんたく)が著した蘭語学の入門書。1788年刊。2巻。上巻で蘭学の伝来を略説,下巻でオランダ語の文法を体系的に記述。→蘭学事始

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蘭学階梯」の意味・わかりやすい解説

蘭学階梯
らんがくかいてい

大槻玄沢著。2巻。天明3 (1783) 年成立。日本で刊行された最初の蘭学入門書。上巻では蘭学研究の意義と歴史を述べ,下巻でアルファベットの文字,アラビア数字,発音,訳法,文法,参考書を述べ,学訓をもって終る。

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旺文社日本史事典 三訂版 「蘭学階梯」の解説

蘭学階梯
らんがくかいてい

江戸後期,大槻玄沢の蘭学入門書
1788年刊。2巻。上巻に日蘭通商と蘭学勃興の由来を述べ,下巻では文字・発音・訳法・初歩文法・参考書などを説いた。蘭学入門書の最初のもので,蘭学の興隆に大きな功績を果たした。

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