蘇芳(読み)スオウ

デジタル大辞泉 「蘇芳」の意味・読み・例文・類語

す‐おう〔‐ハウ〕【×芳/×方/××枋】

マメ科の落葉小低木。葉は厚くつやがあり、羽状複葉。春、黄色い5弁花を円錐状につけ、さや状の赤い実がなる。心材赤色染料とする。インドマレー原産。すおうのき。
染め色の名。1の心材を煎じた汁で染めた、紫がかった赤色。蘇芳色。
蘇芳襲すおうがさね」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蘇芳」の意味・わかりやすい解説

蘇芳
すおう

赤色系の植物染料の一種。またその色名。アジア南部に産するマメ科(APG分類:マメ科)の小高木(学名Caesalpinia sappan L.)で、飛鳥時代から輸入され、その幹を切り砕いて煎(せん)じ、薬用や絹の染色に使われた。灰汁(あく)やミョウバンでアルミニウム媒染を行い、やや茶色みまたは紫色みのある赤色、鉄媒染して紫色に染めた。養老(ようろう)の衣服令、服色の項に、蘇芳は紫の次、緋(あけ)の上に掲げられていて、高位の者が用いる色であったことを示している。それは舶来品で貴重なものであったためであろう。鎌倉時代後期から琉球(りゅうきゅう)貿易によって盛んに輸入され、蘇芳染めの染織品が多くなった。襲色目(かさねいろめ)では、蘇芳は表裏とも蘇芳、下襲の場合に限って表白、裏蘇芳のものを蘇芳といい、また躑躅(つつじ)ということもあった。裏濃(うらこき)蘇芳は表薄蘇芳、裏濃蘇芳である。木工の発色にも用いられ、著名な正倉院の赤漆文欟木厨子(かんぼくずし)をはじめとする赤漆塗りの調度は、後世の赤漆と異なり、木地に蘇芳を塗ってから生漆をかけたもの。

[高田倭男 2019年10月18日]

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色名がわかる辞典 「蘇芳」の解説

すおう【蘇芳】

色名の一つ。蘇方蘇枋とも書く。JISの色彩規格では「くすんだ」としている。一般に、マメ科スオウ樹皮や心材などを染料として染めた暗いみの赤のこと。スオウはインド、マレー半島が原産地。かさね色目いろめの名でもあり、表は薄い茶色、裏は濃い赤など。『延喜式えんぎしき』にも記述がある伝統色名で、平安貴族に愛用され高貴な色であったが、後世には紫染の代用となるなど一般化した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蘇芳」の解説

蘇芳
すおう

蘇方・蘇枋とも。アジア南部に産するマメ科の小高木。薬効があり,幹材の煎汁は染料として用いた。媒染剤によって赤・紫・茶などに染められ,ことに江戸時代には紅染や茜染(あかねぞめ)のかわりに重用されたが,変色・退色しやすい欠点をもつ。色名としては青みをおびた紅色をいい,公家の装束のうち,襲色目(かさねのいろめ)では表は薄蘇芳,裏は濃蘇芳,織色では経糸(たていと)・緯糸(よこいと)とも紫あるいは赤みの二藍(ふたあい)のものをいった。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「蘇芳」の解説

蘇芳 (スオウ)

学名:Caesalpinia sappan
植物。マメ科の小低木,園芸植物

蘇芳 (スオウ)

植物。マメ科の落葉小高木,園芸植物。ハナズオウの別称

蘇芳 (スオウ)

植物。一位の別称

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