蘇合香(読み)ソコウ

デジタル大辞泉 「蘇合香」の意味・読み・例文・類語

そこう〔ソカウ〕【蘇合香】

雅楽唐楽盤渉ばんしき調新楽大曲。舞は六人舞。インドアショカ王蘇合香そごうこう薬草大病の平癒したのを喜ぶ曲という。

そごう‐こう〔ソガフカウ〕【×蘇合香】


マンサク科の落葉高木。高さ約10メートル。葉は手のひら状に裂ける。花は小さく、淡緑色小アジアに産する。
1樹脂原料とした香料
そこう(蘇合香)

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精選版 日本国語大辞典 「蘇合香」の意味・読み・例文・類語

そごう‐こう ソガフカウ【蘇合香】

[1] 〘名〙
① マンサク科の落葉高木。小アジア地方に産する。高さ一〇メートルに達する。葉は長柄をもち掌状に三~五裂し各裂片の縁に鋸歯(きょし)がある。雌雄同株。淡黄緑色の小さな単性花を球状につける。樹脂を蘇合香(蘇油・蘇合油)といい、疥癬(かいせん)など皮膚病の薬に用いる。〔物品識名(1809)〕
② 香の名。①の樹皮からとった樹脂を香料としたもの。また、①の樹皮から製した膏油。皮膚病の薬として用いる。あるいは、諸種の香草を煎じた汁から製した香料ともいう。蘇油。蘇合。
法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747)「蘓合香十二両」
太平記(14C後)一七「義貞は横笛義助は箏の笛、維頼は打物にて、蘇合香(ソガウカウ)の三帖、万寿楽の破、繁、絃急管の声、一唱三嘆の調べ融々洩々として」

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改訂新版 世界大百科事典 「蘇合香」の意味・わかりやすい解説

蘇合香 (そごうこう)

雅楽,管絃舞楽曲名。〈そこう〉ともいい,略して《蘇合》とも書く。唐楽にふくまれ盤渉(ばんしき)調。六人(あるいは四人)舞の文ノ舞(平舞)。唐楽の四箇(しか)の大曲(《皇麞(おうじよう)》《春鶯囀(しゆんのうでん)》《蘇合香》《万秋楽(まんじゆうらく)》)の一つ。番舞(つがいまい)は《進走禿》(あるいは《古鳥蘇(ことりそ)》《新鳥蘇》)。左方襲(さほうかさね)(常)装束の袍(ほう)を両肩ぬいで,下に着ている半臂はんぴ)を見せながら舞う。頭には蘇合香という薬草の形を模した甲(かぶと)(菖蒲甲)をかぶる。昔,インドのアショーカ王が病気のとき,蘇合香を飲んで全快したのを王は喜び,育偈という大臣にこの曲を作らせたと伝える。また宮殿で蘇合香の葉を冠にしてこの舞を舞ったので香りが殿中にたちこめたという。演奏次第は盤渉調調子・音取(ねとり)-道行(舞人登場,出手(ずるて))-序(拍子不定)-三帖(さんのじよう)(延楽)-四帖(早楽)-五帖(早楽)-破(延四拍子)-急(延四拍子,序から急までが当曲舞)-急の重吹(しげぶき)(入手(いるて),退場)。舞の手に,足を中心にした部分と手の動きを中心にした部分とがある。また,序,三,四,五帖は一つの曲の中で拍子が定まらない特異な曲である。なお,管絃曲としては〈三帖〉〈破〉〈急〉が奏され,渡物(わたしもの)には黄鐘(おうしき)調に《蘇合急》がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蘇合香」の意味・わかりやすい解説

蘇合香
そこう

雅楽の曲名。「そごう」ともいい,「そごうこう」ともいった。唐楽,盤渉調 (ばんしきちょう。主音ロ) に属する。舞があり,6人または4人で舞う。「蘇合香」とは薬草の名で,インドのアショーカ王がこれを飲んで重病がなおったのを喜び,育偈という者に作舞させたという。これが唐に渡り,さらに桓武天皇の延暦年間に遣唐舞生の和邇部島継 (わにべのしまつぐ) が日本に伝えた。舞人は菖蒲甲 (かぶと) という蘇合香の葉をかたどった甲をつける。盤渉調調子,道行,序,三帖 (さんのじょう) ,四帖,五帖,破,急,重吹から成る大規模な曲で,唐楽の4個の大曲の一つ。打楽器にもこの曲特有の奏法があり,リズムやテンポの取り方も変化に富んでいる。

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世界大百科事典(旧版)内の蘇合香の言及

【スチレン】より

…スタイレンとも呼ばれ,またスチロールstyrol,ビニルベンゼン,フェニルエチレンなどともいう。天然樹脂である蘇合香(そごうこう)styraxから発見されたのが名称の由来である。特異な芳香のある無色,引火性の液体で,空気中で燃えるとき芳香族化合物特有の黒いすす(煤)を出す。…

※「蘇合香」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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