藤原兼輔(読み)フジワラノカネスケ

デジタル大辞泉 「藤原兼輔」の意味・読み・例文・類語

ふじわら‐の‐かねすけ〔ふぢはら‐〕【藤原兼輔】

[877~933]平安前期の歌人三十六歌仙一人邸宅賀茂川の堤近くにあったので、堤中納言と称された。家集に「兼輔集」がある。

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精選版 日本国語大辞典 「藤原兼輔」の意味・読み・例文・類語

ふじわら‐の‐かねすけ【藤原兼輔】

平安前期の歌人。三十六歌仙の一人。歌人清正(きよただ)の父で、紫式部曾祖父。従三位中納言まで進み、その邸宅が賀茂川堤にあったので、堤中納言といわれた。藤原定方などとともに紀貫之凡河内躬恒などの専門歌人の後援者であった。家集に「兼輔集」があり、「聖徳太子伝暦」の著作もある。元慶元~承平三年(八七七‐九三三

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改訂新版 世界大百科事典 「藤原兼輔」の意味・わかりやすい解説

藤原兼輔 (ふじわらのかねすけ)
生没年:877-933(元慶1-承平3)

平安前期の歌人。三十六歌仙の一人。紫式部の曾祖父で堤中納言と呼ばれた。898年(昌泰1)讃岐権掾となり,のち927年(延長5)従三位権中納言に至った。醍醐天皇側近に侍し,彼の賀茂川堤の邸を中心に紀貫之や凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)らと文学サロンを形成する中心的存在であった。《古今集》以下の勅撰集に55首入集。家集に《兼輔集》がある。真心を飾ることなく率直に訴えた,〈人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな〉(《後撰集》巻十五)の歌は有名である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤原兼輔」の意味・わかりやすい解説

藤原兼輔
ふじわらのかねすけ
(877―933)

平安前期の歌人。三十六歌仙の1人。閑院左大臣藤原冬嗣(ふゆつぐ)の曽孫(そうそん)、父は利基(としもと)。従三位(じゅさんみ)中納言となり、邸(やしき)が賀茂川堤近くにあったためもあって、世に堤中納言とよばれた。醍醐(だいご)天皇寵遇(ちょうぐう)を得、従兄弟(いとこ)であり岳父であった三条右大臣藤原定方(さだかた)とは親交が厚く、紀貫之(きのつらゆき)をはじめとする当時の文化人たちの庇護(ひご)者的存在でもあった。『大和(やまと)物語』には彼を中心とするグループのエピソードがいくつも伝えられている。家集に『兼輔集』があり、『聖徳太子伝暦(でんりゃく)』は彼の撰(せん)といわれている。

 人の親の心は闇(やみ)にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな
[久保木哲夫]


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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「藤原兼輔」の解説

藤原兼輔 ふじわらの-かねすけ

877-933 平安時代中期の公卿(くぎょう),歌人。
元慶(がんぎょう)元年生まれ。藤原利基(としもと)の6男。従三位,中納言。堤中納言と称される。三十六歌仙のひとり。醍醐(だいご)天皇に近侍し,岳父藤原定方とともに紀貫之(つらゆき)ら歌人の庇護者となった。歌は「古今和歌集」以下の勅撰集に56首はいっている。承平(じょうへい)3年2月18日死去。57歳。家集に「兼輔集」。
【格言など】みかの原分きて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ(「小倉百人一首」)

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世界大百科事典(旧版)内の藤原兼輔の言及

【聖徳太子伝暦】より

…聖徳太子の事績を編年体に記した伝記。藤原兼輔が,917年(延喜17)に撰したとみるのが通説であったが,近時これを疑う説もある。2巻。…

【堤中納言物語】より

…この1編以外はすべて中古最末期までの成立とみてよかろうか。 もと独立していた短編がいつまとめられ,《堤中納言物語》と名づけられたか,その由来は皆目不明であるが,後者については,堤中納言藤原兼輔の事跡物語と読者が誤認しての名,《逢坂越えぬ権中納言》の略名《権中納言》の権を堤と誤写したことに発する名,10編の物語を包んで〈物語一つつみ〉と記しておいたことが誤られての名など,憶説めくものは数多くある。各編の順序は,流布本はほぼ四季に従って並べられているが,三手文庫本,前田家育徳財団蔵元禄本,天理図書館蔵佐佐木氏旧蔵本その他,順序がそれぞれに異なる伝本もある。…

※「藤原兼輔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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