(読み)せん

精選版 日本国語大辞典 「薦」の意味・読み・例文・類語

せん【薦】

〘名〙
① すすめること。すいせん
※文芸類纂(1878)〈榊原芳野編〉五「雪舟の薦に藉りて、足利氏画工の長たり」 〔李陵‐答蘇武書〕
② しきもの。むしろ。〔拾遺記‐周穆王〕

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デジタル大辞泉 「薦」の意味・読み・例文・類語

こも【薦/×菰】

マコモを粗く編んだむしろ。現在は多く、わらを用いる。こもむしろ。「荷車を掛ける」
薦被こもかぶ2」の略。おこも。
(「虚無」とも書く)「薦僧こもそう」の略。
マコモ古名
「心ざし深きみぎはに刈る―は千年ちとせ五月いつか忘れむ」〈拾遺雑賀
[類語]敷物上敷き薄縁うすべり茣蓙ござ花茣蓙むしろ花筵敷き藁絨緞緞通毛氈もうせんカーペット

せん【薦】[漢字項目]

常用漢字] [音]セン(呉)(漢) [訓]すすめる こも
人を取り上げ用いるように進言する。「自薦推薦他薦特薦
こも。敷物。「薦席
[名のり]しげ・のぶ

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改訂新版 世界大百科事典 「薦」の意味・わかりやすい解説

薦 (こも)

マコモや藁(わら)を編んだもので,敷物や被覆材として用いる。古くはマコモで織ったがスゲチガヤ,イ(藺),ガマ(蒲),竹なども用い,現在は藁が一般的である。盆の精霊棚に新薦(あらごも)を敷く風習は古代の遺風を示しており,かつては殿上の大床や,大饗(たいきよう)の敷物,あるいは神事の斎庭(ゆにわ)や神前への奉納物の敷物として用いられた。神事などの敷物はすべて清浄を尊んで毎回新しくするしきたりであったが,民間ではこもはむしろ粗末なものとして扱われることが多い。産所にこもを敷くことは,愛媛県下でお産のことをコモウケといったり,山形県下で産婆をコモカブリということからも知れる。乞食や私娼をコモカブリというのもこれらがいつもこもをかぶっているからであり,戸のあけたてのぞんざいなるを〈こもたれ子〉とさげすむのは,出入口の戸の代りに小さな家ではこも類をさげたなごりである。こもは包装材としても使われ,こもで包んだ主に4斗入りの酒樽薦被(こもかぶり)という。
(むしろ)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「薦」の意味・わかりやすい解説


こも

水辺に生えるイネ科の多年草マコモの古名で、それを粗く編んでつくったむしろをいう。「菰」とも書く。「薦かぶり」は、薦で包んだ4斗(約72リットル)入りの酒樽(さかだる)、また、乞食(こじき)がいつも薦をかぶっていたところから、乞食の別称ともなった。出入口の戸、障子のかわりに薦を垂らした貧家、乞食小屋を「薦垂(だ)れ」「薦吊(つる)し」という。また「薦枕(まくら)」は、マコモを束ねてつくった枕であるが、平安時代以降、水辺の旅寝を例えていった。

[兼築信行]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「薦」の解説

薦 (コモ)

植物。真菰の古名

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