精選版 日本国語大辞典 「蔵王山」の意味・読み・例文・類語
ざおう‐ざん ザワウ‥【蔵王山】
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山形・宮城両県にわたる火山群の総称で、蔵王山という山名の単独峰はない。山域は山形県側は山形市・
蔵王の名称は熊野岳や刈田岳の山頂に祀られる蔵王権現によるとされるが、同権現が勧請される以前に連峰を総称して何とよんでいたかは明らかではない。また高峰が聳立するためか、史料上にみえる蔵王山系に関連する山が、現在のどの山にあたるかを確定しがたいものも多い。しかし、一〇世紀末頃に編纂された「古今六帖」に「みちのくにあぶくまがはのあなたにや人わすれずの山はさかしき」と詠まれ、「枕草子」(山はの段)にも「わすれずの山」がみえ、蔵王連峰は歌枕として中央貴族にも知られていた。なお現在の不忘山は、以前は
古くには陸奥国側では、現在刈田岳山頂に祀られる
蔵王山という山名の単独峰はなく、宮城・山形両県にまたがる火山群の総称である。行政上は、宮城県では
当山は修験信仰の山であり、ここに蔵王権現が勧請され祀られたことによって、蔵王山の名があると伝える。その中心となったのは、現在刈田岳の頂上に祀られている
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
宮城・山形両県にまたがる火山群の総称。横川と澄川の上流を境として北蔵王と南蔵王の両火山群に分けられ,一般には北蔵王を蔵王山と呼ぶ。北蔵王は二重式火山で,最高峰の熊野岳(1841m)とその南方の刈田(かつた)岳(1758m)とをつなぐ〈馬の背〉と呼ばれる稜線が外輪山をなし,その東方の五色岳(1672m)は中央火口丘である。五色沼とも呼ばれる〈御釜(おかま)〉は,五色岳の西側に最後に生じた火口に水をたたえた火口湖で,たびたび活動が記録されている。とくに1895年の爆発が大きく,このときに生じた硫気孔が濁川火口瀬にみられる。このような新しい火山活動により,北蔵王では標高1600m以上は一面に赤褐色の噴出物が裸出した荒涼たる景観を呈し五色岳東面や刈田岳東方の〈賽の磧(さいのかわら)〉では標高1100m以上が裸地となっている。
一方,南蔵王の中心をなすのは屛風(びようぶ)岳(1817m)で,その東斜面は断崖をなしている。東方には後烏帽子岳,前烏帽子岳,入道山,馬の神岳など,北西には杉ヶ峰があり,火山群の最南端には頂上部が爆裂火口によって三方からえぐられて複雑な山容を呈する不忘(ふぼう)山がある。南蔵王は新しい火山活動がみられず,北蔵王とは対照的に山頂まで森林におおわれている。
山形県側の山麓には,蔵王国定公園の玄関口にあたる蔵王温泉(最上高湯,強酸性ミョウバン緑バン泉,42~62℃)があり,宮城県側には遠刈田(とおがつた),青根,峨々(がが)などの素朴な温泉が点在している。1962年に蔵王山中を東西に横断する有料道路の蔵王エコーラインが開通したのをはじめ(85年無料開放),刈田岳山頂に至る蔵王ハイライン(有料道路),エコーラインから蔵王温泉に通ずる蔵王ラインなどが次々と開通し,車窓から標高1700m付近までの火山地形や自然林,高山植物などを眺めることができるようになった。また各所にスキー場が整備され,蔵王温泉から地蔵岳山頂付近に至るロープウェーからは名物の樹氷が見られる。
執筆者:水野 裕
蔵王山は,かつては女人禁制の修験の山として知られ,〈西のおやま〉である出羽三山に対して〈東のおやま〉と称された。この山の信仰は,主として農業神の鎮座する山岳,修験行者の修行道場という二つの性格を表しているが,その信仰圏は山麓部や山岳を仰ぎみることのできる地域にとどまっている。蔵王山の名称はここに蔵王権現が勧請されまつられたことに由来し,各地の修験道の山岳と同じように国嶽(くにみたけ)として展開してきた。蔵王山は本来は刈田嶺と呼ばれ,その山上には刈田嶺神がまつられていた。《延喜式》には刈田嶺(かむたみね)神社とある。現在その里宮は山形県側の上山市金谷と宮城県側の刈田郡蔵王町の2ヵ所に鎮座している。しかし,金剛蔵王権現の勧請によって山岳の名称も変化したところに大きな特色がある。平泉の藤原氏が栄華を誇ったころはその庇護を受け,願行寺を中心として一山四十八坊の隆盛をみたと称されているが明らかではなく,登拝者が増加してくる近世には,嶽之坊,案楽院,松尾院,山乗院(三乗院)の4院が個々の登拝口にあって別当の任に当たってきた。こうした一山組織を取り得なかった点に加え,羽黒修験の圧倒的勢力により,蔵王山の信仰圏が山麓部を中心にした地域にとどまったといえる。
執筆者:宮本 袈裟雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
奥羽山脈中南部にある山で、山形県の山形市、上山(かみのやま)市、宮城県の柴田(しばた)郡、刈田(かった)郡にまたがり、おもに安山岩の成層火山群の総称。蔵王連峰ともいう。主稜線(りょうせん)の南北延長は約30キロメートル、最高峰は熊野岳(1841メートル)。澄川(すみかわ)―難場(なんば)沢を境に、北蔵王と、生成のより古い南蔵王に大別され、一般には北蔵王を蔵王山とよぶ。北蔵王は、熊野岳、刈田岳(1758メートル)、馬ノ背などの連なる外輪山が火口湖御釜(おかま)(別名五色沼、直径約360メートル、水深約40メートル)と中央火口丘の五色岳(1674メートル、噴石丘)を抱く複式火山である。ほかに、地蔵山(1735メートル)、名号峰(みょうごほう)(1491メートル。全山が花崗閃緑(かこうせんりょく)岩で火山ではない)や、蔵王温泉を湧出(ゆうしゅつ)する高湯爆裂火口を取り囲む鳥兜山(とりかぶとやま)(1401メートル)、滝山(りゅうざん)(1362メートル)なども含む。北蔵王では、1183年(寿永2)を皮切りに、1972年(昭和47)まで、噴火(水蒸気爆発)、噴気・温泉活発化、地震、鳴動などが四十数回も記録され、現に噴気孔や温泉が多い。ただし、1867年(慶応3、死者3人)などの被害を伴った諸噴火は御釜の内外で発生した。火山泥流を出しやすい。山頂一帯はコマクサなどの高山植物以外は植生の発達が悪く、樹氷が形成されるアオモリトドマツなどの亜高山帯林は標高1300~1600メートルにかけて広がる。南蔵王は屏風岳(びょうぶだけ)(1825メートル)、不忘山(ふぼうさん)(1705メートル)、後烏帽子岳(うしろえぼしだけ)(1681メートル)などの円錐火山(えんすいかざん)が連なり、植生の被覆がよく、とくに西側斜面に亜高山帯林が広がる。蔵王山は、古来、不忘山(わすれずのやま)、刈田嶺(みね)とも称されたが、7世紀に僧行願(ぎょうがん)が吉野(奈良県)の金峰山(きんぶせん)から蔵王権現(ごんげん)を勧請(かんじょう)して以来、この名でよばれるようになったと伝える。江戸末期までは女人禁制の修験(しゅげん)、信仰の山であった。1950年(昭和25)に日本観光百選山岳部の第1位となり、1962年にエコーラインが開通するなど、観光開発が進み、壮大な火山景観に加え、温泉のある樹氷とスキーのメッカとして知られる。蔵王国定公園の中心。
[中川 重・諏訪 彰]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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(2014-10-15)
(2014-10-14)
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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