蒸発岩(読み)ジョウハツガン(英語表記)evaporite

翻訳|evaporite

デジタル大辞泉 「蒸発岩」の意味・読み・例文・類語

じょうはつ‐がん【蒸発岩】

水の供給が限られる湖などが干上がり、水に溶けていた物質濃縮・析出してできる堆積岩岩塩石膏塩化マグネシウムなどの塩類堆積物が知られ、化学岩に分類される。形成時の環境乾燥気候だったことを示す指標となる。蒸発残留岩

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒸発岩」の意味・わかりやすい解説

蒸発岩
じょうはつがん
evaporite

陸域内に閉じ込められた海水あるいは塩湖水の蒸発によって、その中に溶けていた化学物質が析出沈殿してできた堆積(たいせき)岩の総称。蒸発岩をつくる主要な鉱物には、岩塩、カリ岩塩、石膏(せっこう)、硬石膏などがあり、いずれも鉱床として重要である。蒸発岩は普通、石灰岩苦灰岩ドロマイト)に伴って産するが、その生成には乾燥気候が必要であり、地質時代の蒸発岩は古環境の推定に役だつ。アフリカ、中央アジア、アメリカなどの砂漠地帯に現在形成されているのが知られている。

[斎藤靖二]

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改訂新版 世界大百科事典 「蒸発岩」の意味・わかりやすい解説

蒸発岩 (じょうはつがん)
evaporite

塩水湖あるいは閉じられた海域で,海水の蒸発によって塩分が濃縮し,沈殿してできた化学的沈殿岩。蒸発残留岩ともいう。おもな塩類は岩塩NaCl,セッコウCaSO4・2H2O,硬セッコウCaSO4で,それ以外は少ない。1000mの厚さの海水が蒸発すると,15mの厚さの塩類--0.4mがCaSO4,11.6mがNaCl,残り3mがNa,Mgを含む塩類--ができる。大陸の4分の1の地域に分布し,資源として重要。日本には産しない。
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百科事典マイペディア 「蒸発岩」の意味・わかりやすい解説

蒸発岩【じょうはつがん】

海または湖(特に塩湖)の水が蒸発して,水中に溶けていた物質が沈殿してできる岩石。化学的堆積岩の一種。岩塩,硬セッコウ,カリ塩など。一般に,下から上に次のような堆積順序が認められる。1.薄い礫岩(れきがん),赤粘土,ドロマイト,2.厚いセッコウ層,3.厚い岩塩層,4.薄いカリ塩層。この順序は,実験室において海水を蒸発させた場合の,炭酸カルシウム(若干の鉄,水酸化アルミニウムを伴う)→硫酸カルシウム→塩化ナトリウム(硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムを伴う)といった沈殿の順序とよく調和している。蒸発岩は,世界各地に,さまざまな時代につくられたが,ペルム紀には世界的に乾燥気候が広がったため,同時代のものは岩塩,カリ塩の鉱床としても特に有名である。

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岩石学辞典 「蒸発岩」の解説

蒸発岩

evaporite, evaporate, salinastone: 溶液から水の蒸発および化学的物質の沈澱により形成された堆積物[Berkey : 1922].evaporiteは同じ意味である[Grabau : 1920].サリナストーン(Salinastone)[Shrock : 1948].
evaporitic rock: 溶液中の水が蒸発したために鉱物が沈澱して形成された岩石.蒸発岩は閉じた窪地で普通に作られ,岩塩,硬石膏,石膏などが含まれる[Carozzi : 1960].

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