精選版 日本国語大辞典 「葛」の意味・読み・例文・類語
くず【葛】
〘名〙
① マメ科のつる性多年草。各地の山野にふつうに生える。茎は長さ一〇メートル以上になる。全体に白または褐色の荒い毛がある。葉は長い柄を持ち互生し、三個の小葉に分かれる。小葉は長さ一〇~二〇センチメートルの広卵形で先端はとがり、側小葉ではしばしば二~三浅裂する。夏、葉腋(ようえき)から長さ二〇センチメートルぐらいになる花序を出し、紫色の蝶形花を総状につける。莢(さや)は長さ五~一〇センチメートルで褐色の荒い毛におおわれる。肥大した根から葛粉をつくるほか、干したものを葛根(かっこん)といい、漢方では解熱剤に用いる。蔓で行李(こうり)などを編み、また、繊維にして葛布を織るのに用いる。秋の七草の一つ。くずの葉裏は白みがかっていて葉が風にひるがえると目立つところから「裏見」と称し、和歌などで「恨み」にかけ、また「葛」と「恨み」とを縁語とする。漢名、葛。くずかずら。まくず。裏見草。《季・秋》
※万葉(8C後)一二・三〇七二「大埼の荒磯(ありそ)のわたりはふ久受(クズ)の往方(ゆくへ)もなくや恋ひわたりなむ」
※俳諧・蕪村句集(1784)秋「葛の棚葉しけく軒端を覆ひければ」
② 「くずこ(葛粉)」の略。
※鈴鹿家記‐文和三年(1354)一二月一四日「高野法林院参私え葛三袋くるる御本所え葛餠上る」
④ 「くずぬの・くずふ(葛布)」の略。
※平家(13C前)二「山門の領平野庄の神人が葛を売てきたりけるに」
⑤ 紋所の名。葛の花や葉を図案化したもの。葛の花、三つ割葛の花、横見葛の花、三つ葛の葉などがある。

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