葉紹鈞(読み)ようしょうきん(英語表記)Yè Shào jūn

精選版 日本国語大辞典 「葉紹鈞」の意味・読み・例文・類語

よう‐しょうきん エフセウキン【葉紹鈞】

中国作家江蘇省の人。教員生活の経験から、教育題材をとった写実的ヒューマニズム作品を多く発表。代表作「倪煥之(げいかんし)」。(一八九四‐一九八八

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改訂新版 世界大百科事典 「葉紹鈞」の意味・わかりやすい解説

葉紹鈞 (ようしょうきん)
Yè Shào jūn
生没年:1894-1988

中国の新文学を代表する作家の一人。字は聖陶,葉聖陶と呼称されることも多い。江蘇省蘇州の人。文学研究会会員。手法は堅実な写実主義で,代表作の長編小説《倪煥之(げいかんし)》(1930)は,新しい文化に接した青年小学教師倪煥之が,封建的な中国の現実とぶつかりながら,五・四運動を経て1927年の大革命失敗までをどのように生きたかを描き,当時出口のない状況にあった青年たちの共感を得た。また《稲草人(かかし)》(1923),《古代英雄の石像》(1933)などの童話は中国児童文学の草創でもある。作家活動のほか《小説月報》《婦女雑誌》《中学生》等を編集し新しい作家の発掘につとめ,語文教育の面でも活躍した。中華人民共和国になってからは教育部副部長,人民教育出版社社長をつとめ,全人代常務委員,政協常務委員,全国文聯委員などの職にある。文学的著作は単行本のほか《葉聖陶文集》全3巻(1958)にまとめられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「葉紹鈞」の意味・わかりやすい解説

葉紹鈞
ようしょうきん / イエシャオジュン
(1894―1988)

中国の作家。字(あざな)は聖陶。江蘇(こうそ)省蘇州に生まれる。7歳で私塾に学び顧頡剛(こけつごう)、郭紹虞(かくしょうぐ)らを知る。1911年草橋中学卒業後、小中学校教師となり、23年より商務印書館、30年末より開明書店に勤める。中学在学中から創作を始め、19年「新潮」社社員、21年文学研究会発起人の一人となる。『小説月報』代理主編(1927~29)、『婦女雑誌』『中学生』主編を務める一方、教科書編集、童話の創作・編集に尽力。抗日戦前後、武漢大学教授、文学協会理事、解放後は教育部副部長、のち中国文連委員。五・四運動の時代を背景に青年教師の夢と幻滅を描いた長編『倪煥之(げいかんし)』(1928。邦訳『小学教師』)が代表作。ほかに、童話『稲草人』(1922)等多数の著がある。解放後『葉聖陶文集』5巻(1957)が出版された。

[白水紀子]

『竹内好訳『小学教師』(1952・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「葉紹鈞」の意味・わかりやすい解説

葉紹鈞
ようしょうきん
Ye Shao-jun

[生]光緒18(1892)
[没]1988
中国の文学者。江蘇省蘇州の人。字,聖陶。初め小,中学校の教員をしていたが,やがて創作の筆をとり,「文学研究会」の創立メンバーとなって多くの童話,短編を雑誌『小説月報』などに発表,当時の代表的作家の一人となった。代表作は,五・四運動期における理想主義者の小学校教師の苦悩を描いた長編小説『倪煥之 (げいかんし) 』 (1928) 。解放後は出版総署副署長,人民教育出版社社長,教育部副部長などを歴任,教育,出版活動に努め,また作家協会理事の職にもついた。文化大革命後,一時消息が不明であったが,1977年の国慶節で健在が確認された。ほかに短編集『膈膜』 (22) ,『火災』 (23) ,『城中』 (26) ,『未厭集』 (28) ,『四三集』 (36) ,童話『稲草人 (かかし) 』 (23) ,『古代英雄の石像』 (32) ,兪平伯と共著の散文集『剣鞘』 (24) 。

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百科事典マイペディア 「葉紹鈞」の意味・わかりやすい解説

葉紹鈞【ようしょうきん】

中国の作家,教育家,編集者。字は聖陶。文学研究会の発起人の一人として,五・四運動時代の小市民生活を描く。また教師生活の体験をもとにした創作を発表し,特に《倪煥之(げいかんし)》は代表作とされる。創作童話の面でも開拓者である。

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世界大百科事典(旧版)内の葉紹鈞の言及

【児童文学】より

…しかし,子どものための文学の意識的な創造は,第1次世界大戦後,中国に反帝反封建の運動がもりあがり,文学革命が進んでからのことである。葉紹鈞(ようしようきん)の《稲草人(かかし)》(1922)は,中国ではじめての近代童話であり,魯迅(ろじん)はこの作品を〈中国の童話のために一すじの創作の道をひらいてくれた〉と高く評価した。魯迅も,中国の児童文学の発展のために外国の作品を翻訳し,また民話・古典など民族の文化遺産の生かし方に指導的な役割を果たした。…

※「葉紹鈞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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