萬屋錦之介(読み)よろずやきんのすけ

百科事典マイペディア 「萬屋錦之介」の意味・わかりやすい解説

萬屋錦之介【よろずやきんのすけ】

俳優。東京都生れ。本名小川錦一。歌舞伎の3世中村時蔵の四男。1936年に中村錦之助の名で初舞台。しかし,1954年に《ひよどり草紙》で映画デビュー,当時の歌舞伎界には歌舞伎と映画の両方での活動を認めないという風潮があり,歌舞伎の道を断念した。《笛吹童子》や《紅孔雀》などで東映時代劇スターとして〈錦ちゃんブーム〉を起こし,《宮本武蔵》5部作や《反逆児》《武士道残酷物語》《風林火山》などで重厚な演技を見せた。1968年に中村プロダクションを設立し,テレビ時代劇の世界に進出。1972年に萬屋錦之介と改名し,翌1973年から放送が開始されたテレビ番組《子連れ狼》などで人気を博した。《子連れ狼》では,萬屋が演じる主人公の拝一刀(おがみいっとう)を息子の大五郎が〈ちゃん〉と呼び,そのセリフが当時の話題をさらった。なお,初婚の妻は女優の有馬稲子(いなこ)で,再婚は同じく女優の淡路恵子,再々婚は宝塚男役の甲にしき。→時代劇映画

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「萬屋錦之介」の意味・わかりやすい解説

萬屋錦之介
よろずやきんのすけ
(1932―1997)

俳優。東京都生まれ。本名小川錦一。歌舞伎俳優3代目中村時蔵の四男で、1936年(昭和11)4歳のとき中村錦之助の芸名で初舞台を踏んだ。1953年映画に転向し『ひよどり草紙』でデビュー。以後、『笛吹童子』『里見八犬伝』『紅孔雀(べにくじゃく)』などが大ヒットし、スターの座を確立した。テレビ時代劇では『子連れ狼(おおかみ)』で主役を演じ高視聴率を上げた。1972年芸名を萬屋錦之介に改名。1982年自ら設立した中村プロダクションが倒産重症筋無力症に襲われたが、1983年末のテレビ『子連れ狼』で奇跡的に復帰した。最後の映画は1989年の『千利休 本覺坊遺文』。1958年『一心太助』シリーズなどでブルーリボン賞大衆賞、1961年『反逆児』で芸術祭賞、1963年『武士道残酷物語』でブルーリボン賞主演男優賞を受賞。1997年(平成9)3月10日没。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「萬屋錦之介」の意味・わかりやすい解説

萬屋錦之介
よろずやきんのすけ

[生]1932.11.20. 東京
[没]1997.3.10. 千葉,柏
映画俳優。本名小川錦一。歌舞伎俳優の3世中村時蔵の4男で 1936年,中村錦之助の芸名で初舞台。 54年新芸プロの『ひよどり草紙』に出演後,東映と契約。『笛吹童子』 (1954) ,『紅孔雀』 (54~55) などで人気を博し,59年ブルーリボン大衆賞を受賞。『宮本武蔵』5部作 (61~65) や『武士道残酷物語』 (63,ブルーリボン主演男優賞受賞) などにも主演。 72年,芸名を萬屋錦之介と改名し,以降は『子連れ狼』 (73~74) などテレビでも活躍した。

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世界大百科事典(旧版)内の萬屋錦之介の言及

【伊藤大輔】より

…戦後は阪東妻三郎主演の《素浪人罷通る》(1947),《王将》(1948)からキャリアをスタートさせた。《反逆児》(1961)で中村錦之助(のち萬屋錦之介)を,〈錦ちゃん〉の愛称で親しまれたアイドルスターから演技力と格調をそなえた大スターに仕立て上げた功績もあり,晩年は(とくに1970年の《幕末》を最後に映画から遠ざかってからは)錦之介主演で舞台化した《反逆児》を中心に,もっぱら舞台劇の脚本と演出に力を注いだ。著書に加藤泰編《時代劇の詩と真実》(1976)。…

【日本映画】より

…(1)長谷川一夫(1948‐52)(2)鶴田浩二(1952‐53)(3)山村聡(1952‐65)(4)岸恵子,久我美子,有馬稲子の〈にんじんくらぶ〉(1954‐66)(5)三船敏郎(1962‐ 。東京世田谷成城)(6)石原裕次郎(1963‐ )(7)三国連太郎(1963‐65)(8)勝新太郎(1967‐ )(9)中村錦之助(のち萬屋錦之介)(1968‐ )
【時代劇と現代劇】

[サイレント映画の頂点――時代劇の全盛時代]
 日本映画は1920年代後半,量産時代に入り,年間650本ほどの作品がつくられるようになった。まだサイレントの時代であり,全盛期には7000人の弁士がいたという。…

【反逆児】より

…1961年東映作品。〈時代劇の巨匠〉伊藤大輔監督と俳優・中村錦之助(のち萬屋錦之介,1932‐97)の出会いの作品で,同監督の戦後の代表作となるとともに,錦之助を第一線の時代劇スターにした名作。錦之助は,すでに内田吐夢監督《大菩薩峠》三部作(1957‐59),《浪花の恋の物語》(1959),《宮本武蔵》五部作(1961‐65),河野寿一監督《独眼竜政宗》《風雲児・織田信長》(ともに1959),田坂具隆監督《親鸞》二部作(1960)などで,〈錦ちゃん〉の呼名で親しまれたチャンバラ・スターから脱皮して演技派への転身の意欲を見せていたが,この伊藤大輔監督作品で,折り目正しい重厚な演技と凜々(りんりん)とした発声法を身につけて,〈芸のともなった〉貫禄ある大スターに成長する決定的な転機をつくり,《丹下左膳》の大河内伝次郎,《王将》の阪東妻三郎とならんで,伊藤大輔が育てた三大スターとみなされるに至った。…

※「萬屋錦之介」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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