荒海障子(読み)あらうみのしょうじ

精選版 日本国語大辞典 「荒海障子」の意味・読み・例文・類語

あらうみ‐の‐しょうじ ‥シャウジ【荒海障子】

〘名〙 清涼殿の東広廂(ひさし)の北に立ててあった高さ約三メートルの布張りのついたて。表に山海経に描かれた荒海のほとりの手長、足長という怪物の図、裏に宇治網代(あじろ)氷魚(ひお)を捕る図を墨絵で描いてある。あらうみのそうじ。

あらうみ‐の‐そうじ ‥サウジ【荒海障子】

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改訂新版 世界大百科事典 「荒海障子」の意味・わかりやすい解説

荒海障子 (あらうみのしょうじ)

禁裏の著名な障屛の一つ。清涼殿の東側,南北に走る広廂の北の端を仕切る布障子(襖)。2枚1組で南面は中央に荒海,左に足長,右に手長の異形の人物が,北面は宇治川に網代をかけて魚を捕る図が墨絵で描かれている。初めは巨勢金岡(こせのかなおか)の絵で,焼失のたびに原図模本から作画されたと伝えられる。弘徽殿(こきでん)上御局の近くにあったので異様な図が女房たちの注意をひき(《枕草子》),また宇治の風景が詠歌の対象ともなった。
昆明池障子 →障屛画
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百科事典マイペディア 「荒海障子」の意味・わかりやすい解説

荒海障子【あらうみのしょうじ】

清涼殿の萩(はぎ)の戸の前,弘廂(ひろびさし)に立ててある障子。《山海(せんがい)経》から題材を得て,手長足長のいる荒海の絵があるためこの名がある。裏には宇治川の網代(あじろ)が描かれている。《枕草子(まくらのそうし)》にこの障子のことが記されている。→昆明池障子
→関連項目障子

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世界大百科事典(旧版)内の荒海障子の言及

【唐絵】より

…当時の唐絵の画題としては,中国古代から唐にいたる名臣の肖像を描いた賢聖障子が代表的なものであり,これは宮廷の障子絵の画題として近世まで描き継がれている。ほかに,《山海経(せんがいきよう)》所論の長臂国,長股国の異類(手長足長)を描いた荒海障子,馬を描いた馬形障子などが文献により知られる。鎌倉時代後半から南北朝,室町時代にかけては,宋,元の絵画が大量に輸入された。…

【清涼殿】より

…東廂の東が孫廂で,南北9間,東西1間の板葺きで,床は身舎より一段低くなっている。二間と弘徽殿上御局の境に昆明池障子(こんめいちのしようじ)が置かれ,北の突当りは荒海障子で仕切られている。〈北廂〉は東西3間,南北1間,北廊を経て滝口陣,承香殿や弘徽殿に通じる。…

※「荒海障子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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