荒・進・遊(読み)すさぶ

精選版 日本国語大辞典 「荒・進・遊」の意味・読み・例文・類語

すさ・ぶ【荒・進・遊】

[1] 〘自バ上二〙 (動詞の連用形の下に付いて補助動詞的に用いる) 物事の進行するなりゆきのままになる。動作、程度がはなはだしくなる。いよいよ進む。
万葉(8C後)一〇・二二八一「朝露に咲き酢左乾(すサび)たるつき草の日くたつなへに消(け)ぬべく思ほゆ」
[2] 〘他バ上二〙 心のおもむくままに物事をすすめる。慰み興ずる。もてあそぶ。他の動詞と複合して用いられることが多い。
源氏(1001‐14頃)絵合「ゑは、猶、ふでのついでにすさびさせ給あだごととこそ、おもひ給へしか」
※続後撰(1251)羇旅・一三二四「さとあまのたきすさひたるもしほ草又かきつめてけぶりたてつる〈寂蓮〉」
[3] 〘自バ五(四)〙
① 物事の進行するなりゆきのままになる。ある特定方向にいよいよ進む。
※成唯識論寛仁四年点(1020)六「深く染著を生して、酔ひ(スサフ)をもて性とす」
※鮫(1963)〈真継伸彦〉一「外には吹雪がすさぶとも」
② 勢いが尽きて衰える。進み果てて止む。
※白氏文集天永四年点(1113)四「上荒(スサヒ)(〈別訓〉まとひ・あれ)下困みて、勢久しからじ」
※新古今(1205)恋四・一三〇四「思ひかねうちぬるよひもありなまし吹きだにすさべ庭の松風藤原良経〉」
③ 心を奪われておぼれる。ゆとりがなくなって荒れる。
④ 肌などがなめらかでなくなる。荒れる。すさむ。
※街の物語(1934)〈榊山潤〉「風邪をひいた時のやうに皮膚が荒(スサ)び」
[4] 〘他バ四〙 心のおもむくままに物事を進める。慰み興ずる。もてあそぶ。
※平中(965頃)三一「さて、すさびて、やみにけり」
※新古今(1205)夏・二五六「窓ちかき竹の葉すさぶ風の音にいとどみじかきうたたねの夢〈式子内親王〉」
[補注]奈良時代、上二段に活用していたものが、四段にも活用するようになった。のち、四段にだけ活用し、「すさむ」に移行していったと思われる。連用形の例が多く、平安時代では上二段活用でないとは言い切れないが、上二段の確例の大半が他の動詞の下に付いているところから、単独で用いられている連用形は四段活用と見た。→「すさむ(荒)」の補注

すさび【荒・進・遊】

〘名〙 (動詞「すさぶ(荒)」の連用形の名詞化)
① 心が特定の方向にいよいよ進むこと。また、心を、そのおもむくままにまかせること。
古今六帖(976‐987頃)五「ある時はありのすさひに語らはで恋しきものと別れてぞ知る」
※源氏(1001‐14頃)葵「心のすさびにまかせてかくすきわざするは」
② 心のおもむくままにする慰みごと。慰みとして興ずること。もてあそび。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※源氏(1001‐14頃)帚木「はかなきすさびをも、人まねに心を入るる事もあるに」
日葡辞書(1603‐04)「フデノ susabi(スサビ)

すさみ【荒・進・遊】

〘名〙 (動詞「すさむ(荒)」の連用形の名詞化)
① 心のおもむくままにすること。慰みごと。
※聞書集(12C後)「うなゐこがすさみに鳴らす麦笛の声におどろく夏の昼ぶし」
② いとなみ。仕事
正徹物語(1448‐50頃)上「『海女のすさみ』は塩やき藻かき貝拾ふを云ふにや」
③ 荒れること。
※胸より胸に(1950‐51)〈高見順〉九「ストリップに成った為の心の荒(スサ)みもあるだろう」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android