茶飯(読み)ちゃめし

精選版 日本国語大辞典 「茶飯」の意味・読み・例文・類語

ちゃ‐めし【茶飯】

〘名〙
① 塩を加え、茶の煎(せん)じ汁でたいた飯。また、塩と酒を入れてたいた飯に、粉にした煎茶を混ぜた物。茶のはいらない醤油(しょうゆ)味の飯もいう。茶食。〔料理伊呂波庖丁(1773)〕
② (茶飯などを出して人を呼ぶところから) 素人義太夫・素人浄瑠璃などの素人芸。また、それを演ずる人。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「大つづみ茶食の胴をぶっ潰し」

さ‐はん【茶飯】

〘名〙
① 茶と飯。転じて、茶を飲み飯を食うことのように、日常のごくありふれたこと。
正法眼蔵(1231‐53)栢樹子「茶飯の日用活計す」
茶漬けの飯。
東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉二「或は茶飯或は煨薯(〈注〉やきいも)、合食して以て一朝の飢を医す」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「茶飯」の意味・読み・例文・類語

ちゃ‐めし【茶飯】

塩味を加え、茶のせんじ汁で炊いた飯。奈良茶飯
炊き上がった飯に細かく刻んだ煎茶をまぜ入れたもの。
醤油・酒などを入れて炊いた飯。さくらめし。きがらちゃめし。
[類語]めしライス麦飯冷や飯強飯こわめしこわ赤飯炊き込みご飯混ぜご飯五目飯釜飯鮨飯舎利握り飯おにぎりお結び

さ‐はん【茶飯】

茶と飯。転じて、日常のごくありふれたこと。「日常茶飯
茶漬けの飯。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「茶飯」の意味・わかりやすい解説

茶飯 (ちゃめし)

緑茶を使って炊いた飯。東大寺興福寺僧坊に始まるといい,奈良茶飯,奈良茶粥,略して奈良茶とも呼ばれた。《本朝食鑑》(1697)は良質の煎茶の初煎,二煎をとり,塩を少し加えて飯を炊くとしている。いった大豆や焼栗を加え,食べるときあらためて茶をかけることも多かった。江戸では明暦大火(1657)後,浅草待乳山(まつちやま)聖天宮門前の茶店が豆腐汁,煮しめ,煮豆などを添えてこれを売り出し,まだ飲食店の珍しい時代であったため,江戸中から人々がこの奈良茶を食べにいったという。その後,各地各所に奈良茶を称する店ができたが,やがてしょうゆ,酒などで味つけするようになった。〈おでん茶飯〉という茶飯がこれで,桜飯,きがら茶飯とも呼ぶ。幕末近くの江戸では夜ふけの町を流し歩く茶飯売があった。茶飯とあん掛け豆腐を売ると《守貞漫稿》は記している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「茶飯」の意味・わかりやすい解説

茶飯
ちゃめし

元来は茶の煎(せん)じ汁で炊いた飯で、茶粥(ちゃがゆ)から転じたものである。とくに江戸時代には奈良茶飯の名で全国的につくられていた。江戸時代の『料理調法集』には、「極上の煎茶を煎じ、出し殻(がら)を去り塩少々を加え、右にて上白米ふっくりと飯に炊く」とあるが、のちに桜(さくら)茶飯と称し、茶の煎じ汁、塩、しょうゆ、酒を加えて炊き込むやり方が一般に行われていた。現在の茶飯は、茶の煎じ汁は用いず、しょうゆと酒またはみりんを加えて炊く。その相手にはおでんがよくあうとされ、おでん茶飯の看板が以前はよくみられた。東京では明治・大正のころ黄枯(きがら)茶飯といっていた。これは、しょうゆと酒を加えて炊き上げたもので、いまの茶飯である。

[多田鉄之助]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

日本の郷土料理がわかる辞典 「茶飯」の解説

ちゃめし【茶飯】


➀塩などで調味して茶や茶の煎(せん)じ汁で炊いた飯。いり大豆を入れて作ることも多い。奈良の名物料理となっている。◇古くは奈良の東大寺や興福寺で、寺領から納められた茶を煎じ、塩を加えて二番茶で飯を炊き、一番茶に浸して食べていたものとされ、江戸時代には各地に普及した。「奈良茶飯」ともいう。
➁しょうゆと酒で調味して炊いた飯。◇「桜飯」ともいう。

出典 講談社日本の郷土料理がわかる辞典について 情報

和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「茶飯」の解説

ちゃめし【茶飯】

①塩などで調味して茶や茶の煎(せん)じ汁で炊いた飯。いり大豆を入れて作ることも多い。奈良の名物料理となっている。◇古くは奈良の東大寺や興福寺で、寺領から納められた茶を煎じ、塩を加えて二番茶で飯を炊き、一番茶に浸して食べていたものとされ、江戸時代には各地に普及した。「奈良茶飯」ともいう。
②しょうゆと酒で調味して炊いた飯。◇「桜飯」ともいう。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「茶飯」の意味・わかりやすい解説

茶飯
ちゃめし

茶を入れて炊いた飯,または醤油味の薄茶色の飯のこともいう。塩味の飯を炊くとき,沸騰したところに新茶の葉を細かく刻んで加えたり,または茶をガーゼの袋に入れて煮立った湯の中で2~3分煮出し,この汁で炊いてつくる。よくおでんと一緒に供される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「茶飯」の意味・わかりやすい解説

茶飯【ちゃめし】

水の代りに茶でたいた米飯。煎茶(せんちゃ)の葉を細かく刻み,米に混ぜてたくこともあり,塩と酒で味をつける。現在では茶を用いず,醤油と酒で色と味をつけたものを一般に茶飯という(桜飯とも)。香りもよく,おでんの付き物となっている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「茶飯」の読み・字形・画数・意味

【茶飯】ちやはん・さはん

食事。

字通「茶」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の茶飯の言及

【飯】より

…関西でかやく飯と呼ぶのは,ゴボウ,ニンジン,シイタケ,油揚げなどの具を加薬(かやく)(薬味)として炊き込み,あるいは混ぜたものをいうが,この〈かやく〉ももともとは助けるものの意味の〈加役〉で,増量材の意ともされる。江戸時代,東海道目川(めがわ)宿(現,滋賀県栗太郡栗東町)の名物として知られた菜飯は,カブやダイコンの葉をゆでて刻み,塩味をつけて飯に混ぜたもので,奈良茶と呼ばれた茶飯とともに広く普及したものであった。たけのこ飯,クリ飯,マツタケ飯,五目飯,あるいは芳飯(ほうはん)なども,すべてこうした変り飯である。…

※「茶飯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android