く‐がい【苦界】
〘名〙
① (仏語「
苦海」からの語) 苦しみの多い世の中。
人間界。
娑婆(しゃば)。苦海。
② (━する) (「
公界(くがい)」を「苦海」の意にとって)
遊女のつらい
境遇。つらい遊女の勤めをすること。また、遊女の
世界。
※俳諧・独吟一日千句(1675)第四「袖の露身の泥川を落されて くかいにすめば月も
格別」
※
洒落本・郭中掃除雑編(1777)「
女郎の恥はぬしの恥、ぬしの恥はわっちが恥、くがいする
身の上だから、たの
まいではさ」
③ (━する) 苦しい生活を送ること。また、その境遇。
※夢醒真論(1869)〈
貞方良助〉「只人は導かざれば悪に陥り、終には苦界に沈む」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「苦界」の意味・読み・例文・類語
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苦界 (くがい)
仏教語。すべての衆生の苦しみが無限であることを海にたとえて苦海(くかい)という。例,〈我,諸ノ衆生ヲ見ルニ,苦海ニ没在セリ〉(《法華経》寿量品)。この海に界の字をあてて苦界とする。例,〈極楽世界に行きぬれば,長く苦界を越え過ぎて〉(謡曲《実盛》)。近世になると,遊女の境遇に多く用い,公娼のみならず私娼にも用いる。〈苦界とは見えぬ廓(くるわ)の夕景色〉(《柳多留》72)。江戸時代では奉公契約の年限は最長10年,遊女奉公も同じで〈苦界十年〉という語が生まれる。例,〈親のためとて色里(いろざと)にくがい十年と定め〉(浄瑠璃《暦》)。
執筆者:宗政 五十緒
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報