若(漢字)

普及版 字通 「若(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)
9画

[字音] ジャク
[字訓] したがう・わかい・なんじ・もし

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
巫女が両手をあげて舞い、神託を受けようとしてエクスタシーの状態にあることを示す。艸はふりかざしている両手の形。口は(さい)、祝を収める器。〔説文〕一下に「を擇(えら)ぶなり。艸右に從ふ。右は手なり」という。〔詩、周南、関雎〕「參差(しんし)たる(かうさい)は 左右に之れをる」などの詩句によって解したものであろうが、卜文の字形は巫女の舞い、忘我の状態にある形で、神託を求める意。神が祈りをうけ入れることを(諾)といい、卜文・金文には、の意に用いる。卜辞に「王、邑を作るに、(よし)とせんか」「さんか、不(ふじやく)をさんか」のようにいい、不若とは邪神、邪悪なるものをいう。〔左伝、宣三年〕「民、川澤山林に入るも、不はず。魑魅(ちみ)罔兩(まうりやう)(怪物)も能く之れに(な)し」とみえる。金文に「上下の否」というのは、上下帝の諾否(だくひ)の意である。神意に従うことより若順の意となり、神意のままに伝達することから「若(かく)のごとし」の意となる。王が神意によって命を発することを、金文では「王、(かく)のごとく曰く」といい、〔書〕〔詩〕にもその形式の語が残されている。「若(わか)し」は神託を受ける女巫が若い女であることから、「若(ごと)し」はそのエクスタシーの状態になって神人一如の境にあることからの引伸義であろう。「若(なんじ)」「若(も)し」などは仮借。如もと同じく女巫が神託を求める象で、両字通用の例が多い。

[訓義]
1. したがう、神意を求めしたがう。
2. よい、神意がよしとする。の初文。
3. かくのごとく、しかく、神意のままに、そのまま。
4. わかい、若い巫女。弱と通用する。
5. この、強く特定する指示語。
6. 女・如・而・爾などと通じ、なんじ、すなわち、しかり、しかして、あるいは、もしなどの意に通用する。これらの義は本来その字がなく、みな仮借による用法である。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 加太波美(かたばみ)〔名義抄 ニタリ・ヨシ・タスク・ナムチ・モシ・シク・ゴトク・ゴトシ・ワカシ・カクノゴトク・カクノゴトシ・タトヒ・シタガフ・イタル・モシクハ・ニタル/爲 イカスルカ/此 カクノゴトク・カクノゴトケム/箇 イカバカリ

[声系]
〔説文〕に声として(匿)など五字を収める。より分岐した字。秘匿のところにおいて神託を求める呪儀を行う意である。

[語系]
njiak、如njiaは声近く、字の立意もまた近い。なんじ、もし、ごとしなどに通用し、また「若何(いかん)」を「如何」のようにしるす。

[熟語]
若何・若為若英若華若干若許若箇若公若使・若時・若若爾・若淑若曹若輩・若否・若木
[下接語]
何若・海若・赫若・煥若・若・欽若・奚若・儼若・兀若・嗟若・自若・若・杜若・瞠若・沛若・般若・不若・紛若・忙若・穆若・沃若・蘭若・老若

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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