苔筵(読み)こけむしろ

精選版 日本国語大辞典 「苔筵」の意味・読み・例文・類語

こけ‐むしろ【苔筵】

[1] 〘名〙
① 苔が一面にはえたさまを、敷き物としてのむしろに見たてていう語。苔のむしろ。
万葉(8C後)七・一一二〇「み吉野の青根が峯の蘿席(こけむしろ)誰か織りなむ経緯(たてぬき)無しに」
② 山に住む人や隠棲者あるいは旅人のわびしい寝床。苔のむしろ。
※千載(1187)雑中・一一〇九「宿りする岩屋の床(とこ)の苔莚いく夜になりぬ寝(ね)こそやられね〈覚忠〉」
③ (苔は、永遠、長久などのたとえに用いられる常滑(とこなめ)(水苔)を連想させるところから) 永遠の意のたとえ。
※長秋詠藻(1178)上「岩たたむ山のかたそのこけむしろとこしなへにもものを思哉」
[2] 苔の筵は青い色をしているところから、「青(あお)」およびそれと同音を含む地名「青根が峰」にかかる。
※一宮紀伊集(1113頃)「白雪のふりしきぬればこけむしろ青根が峰も見えず成り行く」
[補注]苔の筵を敷くというところから、「敷く」「片敷く」や、それと同音を持つ「敷島」の序の一部としても用いられている。

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デジタル大辞泉 「苔筵」の意味・読み・例文・類語

こけ‐むしろ【××筵】

[名]
苔が一面に生えているさまを、むしろに見立てていう語。こけのむしろ。
「み吉野の青根がみねの―誰か織りけむ経緯たてぬきなしに」〈・一一二〇〉
山中のわび住まいの、粗末な敷物。また、その寝所。こけのむしろ。
「山より山に身を隠し、…移れば変はる―」〈浄・国性爺
[枕]苔のむしろが青いところから「青」にかかる。
「―青根が峰は名のみして唯白雲のよそめなりけり」〈千五百番歌合

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