芽むしり仔撃ち(読み)めむしりこうち

改訂新版 世界大百科事典 「芽むしり仔撃ち」の意味・わかりやすい解説

芽むしり仔撃ち (めむしりこうち)

大江健三郎(1935- )の小説。《群像》1958年6月号に発表し,同月講談社より刊行。戦時下の四国山村に集団疎開させられた感化院児童たちの受難の物語という形式をとっている。少年たちを受け入れた村では,松山開墾の作業を命じたが,疫病が発生したため,少年たちを残して村民全員が村から脱出してしまう。少年たちは一時期の自由を味わうが,やがて帰ってきた村人たちにさらに手ひどく扱われることになる。全編にみずみずしい自然描写と少年たちの情感があふれ,江藤淳をはじめとする多くの批評家から絶賛をあびた作品である。新人作家大江健三郎の名はこの作品によって確固たる位置を占めた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「芽むしり仔撃ち」の解説

芽むしり仔撃ち

大江健三郎の長編小説。1958年刊。太平洋戦争末期、疎開先の山村に疫病が流行し、閉じ込められた村で感化院の少年たちが作り上げる自由の王国と、その挫折を描いたフィクション

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