花祭(愛知県)(読み)はなまつり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花祭(愛知県)」の意味・わかりやすい解説

花祭(愛知県)
はなまつり

愛知県北設楽(きたしたら)郡の東栄町、豊根(とよね)村を中心に近郷の山間部で12月から翌年1月にわたって行われる神楽(かぐら)。花神楽または単に花ともよばれる。湯立(ゆだて)を中心とした霜月(しもつき)神楽である。花祭の花は稲の花を意味するとか、鎮花祭の花、花山(かざん)院を祀(まつ)った花山祭(はなやままつり)の略称とか、常磐木(ときわぎ)を意味する花とか諸説がある。中世末期に山伏修験(しゅげん)の徒によってこの土地に定着した祭りで、祭りに携わるのは宮人(みょうど)とよぶ特別な家系の人々で、その中心となるのが花禰宜(ねぎ)(花太夫(だゆう)とも)とよぶ専門の神人(しんじん)である。民家あるいは神社や公民館の土間を舞処(まいと)とし、土間の中央にかまどを築き大釜(おおがま)をかけて湯を沸かす。天井に五色の紙飾りの白蓋(びゃっけ)という一種の天蓋(てんがい)をつるし、また四方にザゼチという切紙飾りをつける。こうした祭場で一昼夜にわたり儀式と芸能が演じられる。芸能は大別すると素面の舞(地固めの舞、市(いち)の舞、花の舞、三つ舞、四つ舞、湯ばやしなど青少年の舞)と、仮面の舞(山見(やまみ)鬼、榊(さかき)鬼、朝鬼、翁(おきな)、禰宜、みこ獅子舞(ししまい)、しずめの舞など)からなる。鬼はヘンベ(返閇(へんばい))という悪霊を鎮める足踏みを行い、榊鬼や翁などの舞には花禰宜との間に問答がある。これら仮面の舞には能大成以前の古い猿楽(さるがく)芸が想定され、芸能史的価値が高い。国指定重要無形民俗文化財。

[渡辺伸夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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