花月草紙(読み)かげつそうし

改訂新版 世界大百科事典 「花月草紙」の意味・わかりやすい解説

花月草紙 (かげつそうし)

松平定信随筆。6巻。成立は1812年(文化9)の退隠後で,自筆版下による刊行は18年(文政1)以降。格調高い雅文体の随筆で,もってその識見の高さと教養の深さを知るに足りる。全156段からなり,文学学問神仏,医学,軍事など,話題は多岐にわたる。また〈忠孝〉ほか道徳を説いた章段も目立ち,そこにかつて老中首座として寛政異学の禁を断行した著者面目をうかがうことができる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花月草紙」の意味・わかりやすい解説

花月草紙
かげつそうし

松平定信(さだのぶ)の随筆。徳川11代将軍家斉(いえなり)を補佐して寛政(かんせい)の改革政治を断行した松平定信が、老中を致仕したのち、1796年(寛政8)から1803年(享和3)の間に執筆した。書名は、巻1の巻頭に「花のこと」「月のこと」の章があるのに基づく。社会の諸事相、人生明暗自然風物など、あらゆる事象に対する感想を流麗な雅文でつづったもので、全156編よりなる。自然界の現象や景物を観察して感想を述べた章には、風雅を愛した著者の人柄がよく表れているとともに、世俗のさまざまな事象を描いた章には、あらわではないが、為政者の立場にある著者の心情がうかがわれ、文人宰相の随筆として興味深い。刊本は著者の自筆板下によるが、刊年は未詳である。

[神保五彌]

『『花月草紙』(有朋堂文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「花月草紙」の解説

花月草紙
かげつそうし

松平定信の随筆。6巻。1812年(文化9)起稿,18年(文政元)成立・刊行。退隠後,学問・文筆に遊んでいた定信が,心に浮かぶことを筆にまかせて書いたもので,156章からなる。文章は簡潔達意な擬古文で,政治・経済・道徳・学問・文芸などについて記述し,教訓的傾向が強いが,和漢の学に通じた定信の卓越した見識と学問の素養がうかがえる。「日本随筆大成」「岩波文庫」所収。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花月草紙」の意味・わかりやすい解説

花月草紙
かげつそうし

江戸時代後期の随筆。松平定信著。6巻。寛政8 (1796) ~享和3 (1803) 年の間に成立。擬古文。定信が老中辞職後,政治,経済,自然現象,日常生活などについて記したもの。幕末の社会,人生の種々相を高い見識でとらえ,近世日本の代表的な随筆の一つとされている。『随筆大成』『百家説林』に収録。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「花月草紙」の意味・わかりやすい解説

花月草紙【かげつそうし】

松平定信の随筆。成立は1812年以後。6巻6冊156章。雅文。著者が老中辞職後,政治,経済,学問,自然現象,日常生活などについて記したもの。高い見識,深い学殖がみられる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「花月草紙」の解説

花月草紙
かげつそうし

江戸後期,松平楽翁(定信)の随筆
6巻。老中辞職後の1796〜1803年に著述されたらしい。内容は,政治一般から学問・道徳・日常生活や自然にまで多岐にわたり,156項にも及ぶ。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android