芭蕉翁終焉記(読み)ばしょうおうしゅうえんき

改訂新版 世界大百科事典 「芭蕉翁終焉記」の意味・わかりやすい解説

芭蕉翁終焉記 (ばしょうおうしゅうえんき)

1694年(元禄7)に出た其角編の芭蕉追善集《枯尾花》に収める,其角作の芭蕉追悼文。内容は,孤独貧窮と徳業に富むという点を芭蕉の生涯の基本とし,その生涯にわたって,旅や草庵における,あるいは古人門人とのかかわりの中での芭蕉の行動を,その折々の句文を引用しながら述べる。〈ゆく所至る処の風景を心の物にして遊〉び,〈風景を好める癖〉を持つ芭蕉,古人に誘われ,道祖神に旅への思いを誘われる芭蕉,〈正風の師〉と仰がれ,〈自由躰放狂躰,世こぞって口うつし〉し,当代の西行,俳諧の杜子美と慕われた芭蕉を描いている。そして,最後の旅から,病臥,門人たちの看護,臨終,多くの人々が参集した義仲寺での葬儀のことを独特の格調ある文章で記している。後にこの記のみが一書として出版されたものがあり(義仲寺版),扉の裏に杉風描く芭蕉像を江戸の岷雪が模写したものをかかげる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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