芥川比呂志(読み)あくたがわひろし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「芥川比呂志」の意味・わかりやすい解説

芥川比呂志
あくたがわひろし
(1920―1981)

俳優演出家。作家芥川龍之介(りゅうのすけ)の長男として東京に生まれる。慶応義塾大学仏文科卒業。1947年(昭和22)劇作家加藤道夫らと「麦の会」を結成、1949年文学座に入る。知的な風姿と指導力により同座の中心俳優、演出家として活躍し、映画にも出演した。とくに『ハムレット』の主演や、アヌイジロドゥーなどフランス戯曲の演出が有名。1963年福田恆存(つねあり)らと文学座を脱退して劇団雲設立。さらに1975年には演劇集団「円(えん)」を設立、リーダーとなった。知性派新劇人として著作も多い。

水落 潔]

『芥川比呂志著『決められた以外のせりふ』(1970・新潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「芥川比呂志」の意味・わかりやすい解説

芥川比呂志
あくたがわひろし

[生]1920.3.30. 東京
[没]1981.10.28. 東京
俳優,演出家。芥川龍之介の長男で,作曲家也寸志は弟。慶應義塾大学仏文科卒業。加藤道夫とつくっていた「麦の会」から 1948年文学座に参加,恵まれた容姿と知性で『ハムレット』の主演 (1956) で成功。 63年,岸田今日子らと文学座を脱退,福田恆存の指導のもとに劇団雲を結成。演出にも意欲をもち,『なよたけ』 (55) ,『榎本武揚』 (68) などを演出。 75年に再び岸田らと「雲」を脱退して演劇集団円を創立するが,79年の泉鏡花作『夜叉ヶ池』の再演出が最後となった。ほかに,随筆『決められた以外のせりふ』 (70) など。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「芥川比呂志」の解説

芥川比呂志 あくたがわ-ひろし

1920-1981 昭和時代の俳優,演出家。
大正9年3月30日生まれ。芥川竜之介の長男。芥川也寸志(やすし)の兄。慶大在学中から演劇をはじめ,加藤道夫らと劇団麦の会を結成。昭和24年文学座にはいり,中心的俳優,演出家となる。38年福田恒存(つねあり)らと劇団雲を,50年円を結成した。同年「スカパンの悪だくみ」などの演出で芸術選奨。昭和56年10月28日死去。61歳。東京出身。著作に「決められた以外のせりふ」など。

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世界大百科事典(旧版)内の芥川比呂志の言及

【劇団】より

…そして54年に戦後最初の劇団拠点劇場として東京六本木に俳優座劇場を建設した。杉村春子らの〈文学座〉は1949年に芥川比呂志(1920‐81)らが加入し,フランス演劇研究会をつくって劇界に新風を送り,劇団けいこ場を試演会場とするアトリエの会活動を展開した。拠点劇場を持たない劇団がけいこ場を小劇場活動の拠点とした最初である。…

【新劇】より

… 弾圧は免れたものの,45年春以降は疎開を余儀なくされていた文学座は,森本薫作・杉村春子主演《女の一生》で戦後をスタートし,47年には戦前の伝統を継承しつつ〈フランス演劇研究会〉を発足させる。49年には,長岡輝子,芥川比呂志(1920‐81),加藤道夫らもこれに加入して,文学座のみならず新劇界に新風を吹き込むこととなった。フランス演劇研究会ではサルトル,アヌイなど戦後フランスの実存主義的演劇を初演するとともに,東京信濃町の同座稽古場を利用して〈新しき演劇の実験室〉としての〈アトリエ公演〉活動を展開した。…

【文学座】より

…政治性を排した〈娯楽としての演劇〉を目ざし,戦中も弾圧を免れた唯一の新劇団として活動を続けた。戦後は49年に芥川比呂志(1920‐81)らも加わり,〈フランス演劇研究会〉〈アトリエ公演〉で内外の新しい演劇を紹介・上演する一方,森本薫《女の一生》,T.ウィリアムズ《欲望という名の電車》,シェークスピア《ハムレット》などの上演で地歩を固め,昭和20年代,30年代を通じ,新劇界の中枢的劇団として多くの人々に親しまれた。なかでも劇団の中心的存在である杉村春子(1909‐97)主演の《女の一生》は,700回以上も上演を重ねている。…

※「芥川比呂志」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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