良・善・能(読み)よう

精選版 日本国語大辞典 「良・善・能」の意味・読み・例文・類語

よう【良・善・能】

〘副〙 (「よく」の変化した語)
① 十分に。手おちなく。また、巧みに。上手に。
※伊勢物語(10C前)二三「この女、いとよう仮粧じて、うちながめて」
② 大変。ひどく。大層。はなはだ。
源氏(1001‐14頃)若紫「かぎりなう、心を尽くし聞ゆる人に、いとよう似たてまつれるが、まもらるなりけり」
③ しばしば。ちょくちょく。まま。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)前「なんだナ、おめへ達ア能(ヨ)う喧嘩アするぜへなア」
④ 他の行為・言説などに対する驚き、賛嘆、憤り、非難などを表わす。よくもまあ。
※虎寛本狂言・呂蓮(室町末‐近世初)「ヤイわ坊主、能うこちの人をたらいてそりおったな」
⑤ 他の来訪に対して、それを喜び、相手をねぎらう気持を表わす。
※虎明本狂言・末広がり(室町末‐近世初)「ようおじゃった」
⑥ 別れに際して、出て行く人に、道中で、つつがないことを祈り、十分気をつけることを、求める気持を表わす。
洒落本辰巳之園(1770)「アイおはばかり、申やした。よふ御出遊しませ」
⑦ (あとに打消の表現を伴って不可能の意を表わす) …することができない。とても…できない。→補注
狂言記・鶯(1700)「南無三宝さしそこなふた、そりゃよふささぬは」
⑧ (推量または反語の表現を伴って) 容易にありえないことの意を表わす。どうしてなかなか。
※狂言記・胸突(1660)「よう、われがやうな物がゆるさうはいな」
[補注]⑦は、上中古の副詞「え」にあたり、室町時代には「よ」の形がある。これと、副詞「よく」の音便形との混交とも見られる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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