(読み)はしける(英語表記)barge
lighter

精選版 日本国語大辞典 「艀」の意味・読み・例文・類語

はし・ける【艀】

〘他カ下一〙 (名詞はしけ(艀)」の動詞化)
① 陸と本船との間を艀船で往復して、貨物旅客などを運ぶ。
洒落本・文選臥坐(1790)東北の雲談「振新がおくり物をはしけるやうにして持てくるの」
② 他へ移す。他の場所に転ずる。また、こっそり移す。隠す。
※雑俳・川柳評万句合‐宝暦一三(1763)満二「かまくらのいけすへ娵(よめ)は身をはしけ」
③ 盗む。くすねる。ちょろまかす。
黄表紙・俟待開帳話(1803)下「小べんぐみのめかけ船は、尻にほをかけて、仕度金をはしけたがる」

はしけ【艀】

〘名〙 「はしけぶね(艀船)」の略。
※禁令考‐前集・第四・巻三四・明和四年(1767)一〇月「元船濡米有之哉吟味いたし、艀下之儀無油断申付」

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デジタル大辞泉 「艀」の意味・読み・例文・類語

はしけ【×艀】

《「はしけぶね」の略》河川・港湾などで大型船と陸との間を往復して貨物や乗客を運ぶ小舟船幅が広く、平底。はしぶね。

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改訂新版 世界大百科事典 「艀」の意味・わかりやすい解説

艀 (はしけ)
barge
lighter

はしけ船の略。現在ではバージと呼ばれることも多い。一般には港内,内海,河川などで貨物を運搬する小型船の総称として用いられる。非自航船が大部分であり,使用水域が平穏で,かつ浅喫水を要求されることなどから箱型平底船体構造をもつ。日本では,達磨船,団平船,伝馬船などが古くから近距離および中継輸送用のはしけとして,また倉庫代用の倉はしけとして,輸送の補助機関使われてきたが,アメリカ,ヨーロッパ,ソ連(現ロシア)などでは早くから内陸河川輸送の有力な輸送機関として広く用いられてきた。最近では各種の専用バージや航洋バージなどの大型バージが建造されており,押船と一体となったプッシャーバージによるバージラインシステムもある。

バージの型式,種類には,デッキバージホッパーバージタンクバージ,ダンプバージおよび特殊バージがある。デッキバージはフラットデッキを有し,車両,木材,コンテナーなどの貨物をデッキ上に積載する。ホッパーバージは貨物倉を有し,石炭,穀物などの輸送に用いられ,もっとも数多く見られる型式である。タンクバージは石油や石油製品の輸送用として,ダンプバージは土運船に代表される港湾建設作業用として用いられる。独立のタンクを船体内に内蔵し,化学薬品などの危険物,糖みつなどの特殊貨物を運ぶ特殊バージもある。バージの大きさはさまざまであるが,アメリカでは長さ50m程度のものが標準的に用いられている。また航洋バージでは,約5万tの貨物積載能力のあるものも建造されている。この種の航洋バージは,ほぼ船の形をなし,船尾に押航用の凹部(ノッチ)を有し,プッシャーバージシステムとして用いられる。海洋開発用としても各種のバージが用いられている。半潜水バージは,海水バラストの注排水により浮上,沈降することができ,浮かんだままの大型構造物の積卸しが可能である。

バージの輸送は,大別して引船による曳航と押船による場合がある。前者は1隻ないし5隻くらいのバージを縦に曳航する縦曳きが多く,引船とバージおよびバージとバージ間はロープによって連結されている。バージの隻数が増せば2列にして縦曳きする場合もある。一方,押船の場合は,最大40隻くらいのバージを縦横に連結して船団を編成し,押航するプッシャーバージシステムをとる。この方式はアメリカで発達したものであり,曳航に比べて推進効率がよく,操船性にも優れている。外洋バージにも,このプッシャーバージシステムが採用されており,高波浪域の航行を可能にする各種のバージ連結方式が考案されている。

バージ輸送は小型バージを多数連結して運航できるので小単位貨物の輸送に適し,荷役が長時間にわたる場合には,バージを倉庫代りに利用し,押船などの稼働率を上げることができる。また,バージには乗組員が乗船しないため,輸送費用を少なくすることもできる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「艀」の意味・わかりやすい解説


はしけ
barge
lighter

河川、運河、湾内、港内などでの貨物輸送にあたる舟艇。基地間の輸送にあたるものと、船舶への積み荷、揚げ荷に従事するものとがある。貨物の扱いの便宜上、幅が広く底の平たい船型が特徴で、推進機を備えて自航する形式と、曳航(えいこう)される動力のない形式がある。用途によって一般貨物用艀、油(あぶら)艀(オイルバージ)、石炭艀(コールバージ)などがある。内海などの遠距離用には長さが100メートル前後の大型もあり、特殊な形式としては、そのままバージ・キャリアーに搭載するものもある。

[岩井 聰]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ライター】より

…点火器,とくにタバコの火をつけるためのシガレットライター。1779年ころにイタリアのペイラL.Peylaが,ガラス管に蠟(ろう)を入れ,一方の端末にリン,硫黄,油を詰め,ガラス管を折ることで発火する〈トリノのろうそく〉を発明した。また1823年にはドイツの化学者J.W.デーベライナーが水素発生装置のガラス容器の口に白金海綿(海綿状にした白金)をつけ,これに水素を吹きつけると発火する点火器をつくり,28年にはドイツとイギリスで約2万個が使われていたという。…

【家船】より

…しかしいずれも現在は陸上の生活に変わってしまった。なお,このような海上居住の漂泊漁民と,昭和20年代末ごろまで東京港や大阪港にいて沖合停泊の貨物船から陸上への貨物運搬をしていた艀(はしけ)船の水上生活者とはいかなる関連を有するかという問題はいまだにはっきりせず,現在ではこうした艀での運搬業者の生活も消滅してしまった。家船に類似した海上漂泊民が香港や東南アジアのフィリピン南部,タイ南部からマレーシア,インドネシアに見られるが,いずれも日本の家船との関連は明確ではない。…

※「艀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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