精選版 日本国語大辞典 「船場汁」の意味・読み・例文・類語
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〈せんば〉または〈せんば煮〉などともいわれ,野菜と塩魚を汁たっぷりに煮たもの。代表的な材料がダイコンと塩サバで,晩秋から冬へかけての上方の典型的な番菜(ばんさい)(惣菜(そうざい))とされた。材料が安直なところから,大阪の問屋街船場で重宝がられたので,この称があるとされるが疑わしい。室町後期の《証如上人日記》《津田宗及自会記》にはガン(雁)およびヒラタケ(平茸)の〈せんばいり〉が記録されているが,これはそれらの材料をいりつけるように煮て,塩,ことに焼塩で調味したものだった。《料理綱目調味抄》(1730)には〈船場煮〉の名が見え,〈船場煮,熬(いり)とも。大略うしほ煮のごとく多くは塩魚に大根,ふき等を加ふ。鯛(たい),鱸(すずき),鰹(かつお),鮭(さけ),鱒(ます),鱰(しいら),鱈(たら),鰤(ぶり)。吸口,柚,木のめ,葱(ねぎ),青山椒〉とあり,材料は安直な品とは限らず,倹約料理とは見受けられない。幕末期の《年中番菜録》(1849)に見える〈せんば煮〉は現在の船場汁と材料に大差はないが,平皿で供される煮物の一種で,近世の〈せんば〉はすべて煮物であった。
執筆者:平田 萬里遠
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