日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空路」の意味・わかりやすい解説
航空路
こうくうろ
飛行機の飛行経路として、空中に設定された一定の幅(保護空域)をもった通路である。航空路の設定は、通常国際民間航空機関(ICAO(イカオ))で定められた飛行情報区を管轄している国が行い、AIP(航空路誌)、NOTAM(ノータム)(notice to airmen)によって告示される。設定にあたっては、地形、気象特性、航空保安施設、通信施設などについて検討し、飛行検査により安全上の確認がなされたのちに指定される。
航空路はおもに航空保安無線施設(超短波全方向無線標識施設VORと無指向性無線標識施設NDBを主体とする)を結んで設定されている。各VOR相互間を結ぶ航空路は、中心線の左右それぞれに最小4海里(マイル)(約7.2キロメートル)、つまり全幅8海里(約14.4キロメートル)の幅を有する帯状空間である。これはビクター航空路(victor airway)とよばれており、国内航空路の8割以上を占めている。一方、NDBを使用する航空路は、その精度を考慮して片側最小5海里(約9キロメートル)、全幅を10海里(約18キロメートル)として設定している。これとは別に、洋上飛行に利用される国際航空路の場合は、無線施設の利用が限定されるため、その幅が最大で中心線の左右それぞれ25海里(約45キロメートル)、全幅50海里(約90キロメートル)、あるいは片側50海里(約90キロメートル)、全幅100海里(約180キロメートル)の航空路がある。航空機はこれら無線施設の電波を順次たどりながら航空路の中心線に沿って飛行するのである。航空路には、地上の障害物から一定の安全間隔を保つとともに、無線施設からの信号を良好に受信するために、最低高度の制限が設けられている。航空機はこの最低高度以下の高度では飛行してはならない。
航空路の針路方向は、コンパスの使用を容易にするため磁方位で表示してあり、コース上の必要な地点には位置通報点が設けられている。この点を通過する航空機は航空交通管制センターに必要事項を報告することが義務づけられている。
また、航空路にはICAOの基準に基づく名称がそれぞれつけられている。原則として国際航空路にはアルファベットのA(alfa(アルファ)と読む)、B(bravo(ブラボ))、R(romeo(ロメオ))、G(golf(ゴルフ))のうちの1字と3桁(けた)の番号(1~999)を組み合わせ、国内航空路はV(victor(ビクター))とW(whisky(ウイスキー))のいずれかと3桁の番号(1~999)を組み合わせて、それぞれ名称をつくる。たとえば、A‐590、R‐220、V‐1、W‐23などである。なお、航空路に類するものとして、陸上の無線施設と洋上の飛行の始点・終点を結ぶ洋上転移経路(oceanic transition routeを略してOTR)および無線施設を利用して直行飛行を行うための直行経路がある。
[青木享起・仲村宸一郎]