航空路(読み)こうくうろ(英語表記)airway

翻訳|airway

精選版 日本国語大辞典 「航空路」の意味・読み・例文・類語

こうくう‐ろ カウクウ‥【航空路】

〘名〙 航空機の安全な航行に適するよう、地上の無線援助施設を結んだ、一定の幅をもつ空中の航路。エアウエー。
※新種族ノラ(1930)〈吉行エイスケ〉断髪女を連れて航空港をご出発「ジャイアント旅客機は大空運輸会社の定期航空路(カウクウロ)欧羅巴に向って飛行した」

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デジタル大辞泉 「航空路」の意味・読み・例文・類語

こうくう‐ろ〔カウクウ‐〕【航空路】

航空機の航行に適するよう、地上の無線援助施設を結んだ、一定の幅をもつ空中の航路。エアウエー。

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改訂新版 世界大百科事典 「航空路」の意味・わかりやすい解説

航空路 (こうくうろ)
airway

航空機が計器飛行方式により目的地に飛行するための経路で,国が設定したものをいう。地理的および地形的条件,気象条件,航空保安施設の状況,それに国および国際的事情などを考慮し,繰り返して飛行するのに適する経路が定められる。その名称や空域の位置および範囲などは一般に告示によって示される。航空路上を飛行する航空機は原則として航空交通管制の指示を受けるが,必ずしもすべての航空機が航空路を飛行しなければならないということではない。

航空路は,航空機がその飛行経路を維持するための誘導電波を発信する無線局を結ぶ線の左右に,一定の幅をもった通路として設定されている。無線局は必要に応じて航空路の中間地点や,屈折点にも設置される。無線局の種類には,VOR,VOR/DME,VOR/TAC,NDBなどがあるが,最近ではNDB局は,より性能のよいVORに置き換えられ,漸減ないしは廃止の傾向にある。それぞれの航空路の各区間ごとに,最低経路高度が設定されている。これは無線局からの電波を良好に受信するために,定められた最低受信可能高度ならびに最低障害物間隔高度(航空路の中心線から一定の範囲内にあるもっとも高い障害物の高さに,所定の垂直間隔を加えたもの)を勘案して決められたもので,1000フィート(1フィートは約0.3m)単位で示される。幅については種々の制限条項があるが,VORで構成されている航空路では,二つのVOR局の区間距離が92カイリ(1カイリは約1.85km)以下の場合は,中心線の両側に4カイリの幅をもち,VOR局から46カイリ以上になる場合は,局から航空路中心線の左右5度の延長線の範囲内となる。NDB局の場合は,区間距離が114カイリ以下では中心線両側に5カイリ,局から57カイリ以上はVOR局の場合と同様に左右5度の延長線上の範囲内となる。なお,NDB局を結んで構成される航空路(NDB航空路)では,南北方向(磁針方位315度から45度および135度から225度)の幹線航空路をA,南北方向の支線航空路をB,東西方向(磁針方位45度から135度および225度から315度)の幹線航空路をG,東西方向の支線航空路をRおよび支線航空路で無線局の運用時間が限定されているものをWと5種に分類し,航空路番号の頭文字として表示する。

大洋における洋上管制区の飛行経路は,自由に設定できることを原則としているが,航空交通量の多いところや国際的な問題のある空域などでは,特別に航空路が指定されることがある。通常,洋上航空路においては,基準点を無線局にとれないことが多く,その場合は地球座標によって設定される。これら洋上航空路の幅は,北部および中部太平洋にあっては航空路の中心線の両側に50カイリ,日本海および東南アジア洋上では中心線の両側の25カイリとなっている。また北太平洋や北部大西洋など交通量の多い航空路においては,特別に一方通行路を設定し,複線あるいは複々線化を計ったり,垂直離間間隔が2000フィートと定められている2900フィート以上の高度において,さらに複線の中間に1000フィートの高度差を有する特別の航空路(コンポジットセパレーション・ルート)が設定されている。これら洋上管制区域の航空路と陸上の航空保安無線施設とを結ぶ経路は,洋上転移経路として指定され,交通量の多い空域においては出入経路を別に定めている。

 地上からの航法援助を必要としない慣性航法を用いて大圏コースを飛行する場合は,管制上の障害がないかぎり,パイロットの要求に応じ,任意の地点から地点への飛行経路がそのつど許可される運用方式になっている。このほか,その国の事情によって設定されるコリドールと称する航空路があり,航空機は特定の規則に従って飛行する。東京~モスクワ間のシベリア上空の航空路は,コリドールとして最長距離のものである。なお,ジェット機が運航された当初は,専用の航空路としてジェットルートが,またアメリカではエリア航法専用の航空路が設定された時期があったが,現在は廃止されている。

航空機の運航に必要な空港ならびに航空路に関する各種の情報を収録したもので,飛行中に使用する目的で編集される。内容はICAOイカオ)(国際民間航空機関)の規定に準拠したもの,ならびにそれと異なる当事国で定めた規則などを含み,国際,国内の航空機の運航の用に供される。情報の種類としては,空港およびその周辺の障害物,航空路,航空保安施設,有視界飛行ならびに計器飛行による発着経路を含む飛行方式,航空交通管制システムと規則,その他滑走路の改修工事などで,正確さを期するため発行月日の記載を必要とし,通常改訂ページの差替方式の採用,または発行頻度を多くするなどの方法がとられる。使用用語は英語および当事国語を原則として用いることになっている。日本では運輸省航空局が編集,自衛隊機用には防衛庁から専用のものが発行されている。

成田~サンフランシスコ間の航空路など,航空機が運航されている区間を示す意味で航空路線を航空路と称する場合がある。運航の種類によって国際,国内,あるいは定期,不定期航空路線などと呼ばれる。航空機による旅客の定期輸送としては,1914年アメリカのフロリダ州タンパ~セント・ピーターズバーグ間に開設されたものが最初で,国際間の定期航空路は,19年フランスのファルマン社によるパリ~ブリュッセル間の路線に始まる。また大洋横断定期航空路は,34年ドイツによってアフリカ西岸とブラジル間に大西洋横断郵便輸送路線が開設され,36年にはパン・アメリカン航空(アメリカ)によってサンフランシスコ~マニラ間の太平洋横断の旅客定期輸送航空路線が開設された。日本では,1929年日本航空輸送株式会社によって東京~大阪~福岡間の路線において旅客の定期輸送が本格的に始められた。

 なお,営業路線には権益が付随しており,路線の開設に当たり,国内においては航空会社の路線申請に基づいて運輸省航空局が需要動向,他の航空会社との競合,使用航空機や空港の状況などを検討し,それにより運輸大臣の認可が与えられる。国際間の商業航空権については,国際運送の内容から次の五つに分類され,通常〈五つの自由〉と呼ばれている。(1)領空通過の自由ともいい,相手国の領域を無着陸で横断する自由,(2)相手国の領域に,給油,整備など運輸以外の技術的な目的のため離着陸する自由,(3)自国領域内で積み込んだ貨客を相手国の領域内でおろす自由,(4)自国に向かう貨客を相手国内で積み込む自由,(5)相手国の領域内で第三国の領域に向かう貨客を積み込み,または第三国の領域で積み込んだ貨客をおろす自由。(1)と(2)を通過権といい,(3)~(5)の自由を運輸権と呼んでおり,通過権については多くの国が国際業務通過協定に加入したが,運輸権については,離発着地点,機種,便数など複雑な条件があり,実際には既得権の比重が大きく,この協定についての摩擦は珍しくはない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空路」の意味・わかりやすい解説

航空路
こうくうろ

飛行機の飛行経路として、空中に設定された一定の幅(保護空域)をもった通路である。航空路の設定は、通常国際民間航空機関(ICAO(イカオ))で定められた飛行情報区を管轄している国が行い、AIP(航空路誌)、NOTAM(ノータム)(notice to airmen)によって告示される。設定にあたっては、地形、気象特性、航空保安施設、通信施設などについて検討し、飛行検査により安全上の確認がなされたのちに指定される。

 航空路はおもに航空保安無線施設(超短波全方向無線標識施設VORと無指向性無線標識施設NDBを主体とする)を結んで設定されている。各VOR相互間を結ぶ航空路は、中心線の左右それぞれに最小4海里(マイル)(約7.2キロメートル)、つまり全幅8海里(約14.4キロメートル)の幅を有する帯状空間である。これはビクター航空路(victor airway)とよばれており、国内航空路の8割以上を占めている。一方、NDBを使用する航空路は、その精度を考慮して片側最小5海里(約9キロメートル)、全幅を10海里(約18キロメートル)として設定している。これとは別に、洋上飛行に利用される国際航空路の場合は、無線施設の利用が限定されるため、その幅が最大で中心線の左右それぞれ25海里(約45キロメートル)、全幅50海里(約90キロメートル)、あるいは片側50海里(約90キロメートル)、全幅100海里(約180キロメートル)の航空路がある。航空機はこれら無線施設の電波を順次たどりながら航空路の中心線に沿って飛行するのである。航空路には、地上の障害物から一定の安全間隔を保つとともに、無線施設からの信号を良好に受信するために、最低高度の制限が設けられている。航空機はこの最低高度以下の高度では飛行してはならない。

 航空路の針路方向は、コンパスの使用を容易にするため磁方位で表示してあり、コース上の必要な地点には位置通報点が設けられている。この点を通過する航空機は航空交通管制センターに必要事項を報告することが義務づけられている。

 また、航空路にはICAOの基準に基づく名称がそれぞれつけられている。原則として国際航空路にはアルファベットのA(alfa(アルファ)と読む)、B(bravo(ブラボ))、R(romeo(ロメオ))、G(golf(ゴルフ))のうちの1字と3桁(けた)の番号(1~999)を組み合わせ、国内航空路はV(victor(ビクター))とW(whisky(ウイスキー))のいずれかと3桁の番号(1~999)を組み合わせて、それぞれ名称をつくる。たとえば、A‐590、R‐220、V‐1、W‐23などである。なお、航空路に類するものとして、陸上の無線施設と洋上の飛行の始点・終点を結ぶ洋上転移経路(oceanic transition routeを略してOTR)および無線施設を利用して直行飛行を行うための直行経路がある。

[青木享起・仲村宸一郎]

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百科事典マイペディア 「航空路」の意味・わかりやすい解説

航空路【こうくうろ】

航空機の飛行のため特に指定された空中の経路。地理的・地形的条件,気象条件,さらに国や国際的事情を考慮して,繰り返し飛行するのに適した経路が設定されている。これに沿って各種の航行援助施設が設けられている。→航空交通管制航空図航空法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「航空路」の意味・わかりやすい解説

航空路
こうくうろ
air route; airway

地形,標高,気象条件,非常の場合の不時着地などの地表上の条件を考慮し,その上空を航空機の航行に適するものとして一定の幅 (保護空域) をもって空中に設定された通路。航空路はおもに航空保安無線施設 (VOR,NDB) を結んで設定されており,VOR相互間を結ぶ航空路をビクター航空路 victor airwayと呼び,幅 14.4kmを有する。 NDBを使用する航空路は,その幅が 18kmとして設定されている。洋上飛行による国際航空路は,幅が 90kmのものと 180kmのものがある。

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