航海暦(読み)こうかいれき

精選版 日本国語大辞典 「航海暦」の意味・読み・例文・類語

こうかい‐れき カウカイ‥【航海暦】

〘名〙 航海に用いるため、太陽、月、星などの日々の天空上の位置を記したもの。天体暦
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「即前表の廿一日に此を過ぎたるを以て、廿一日をたたみて、航海暦に合す」

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デジタル大辞泉 「航海暦」の意味・読み・例文・類語

こうかい‐れき〔カウカイ‐〕【航海暦】

天文航法に必要な太陽・月・惑星恒星の毎日の位置などを列記した表。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「航海暦」の意味・わかりやすい解説

航海暦
こうかいれき

航海者が天文航法によって船舶の位置を決定するのに必要な天体の位置を記した暦書。航空機用のものは航空暦という。航海者は、動いている船上でその位置を速やかに決定しなければならないため、天体暦から、とくに航海に便利なように時間間隔を細分した時刻に対して、太陽・月・惑星・明るい恒星(主として1等星)のグリニジ時角と赤緯、太陽・月の出没時刻、正中時刻が記載されている。しかし航海暦は、天文家用の天体位置表に比べて、天体観測器として六分儀を使用するため、その記載精度は劣る。日本には、第二次世界大戦前は海軍水路部が天体暦から編纂(へんさん)した『天測暦』『天測略暦』があり、このうち『天測略暦』は航空用として1926年(大正15)以来刊行されたものである。第二次世界大戦後は海上保安庁海洋情報部(旧、水路部)から毎年出版されている。

[渡辺敏夫]

『巻幡竹夫著『天文航法』新訂版(1988・成山堂書店)』『長谷川健二著『天文航法』改訂新版(1994・海文堂出版)』『航海技術研究会編『練習用 天測暦』(2001・成山堂書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「航海暦」の意味・わかりやすい解説

航海暦 (こうかいれき)
nautical almanac

大洋を航海する船上で,天体観測によって船の位置を計算する際に,便利に使えるように編纂(へんさん)された簡易天体位置表をいう。太陽・月・惑星・おもな恒星の位置,日月出没表,日月食などの記載がある。日本の航海暦には海上保安庁の水路部で発行されている《天測暦》《天測略暦》がある。近年は天体観測に頼る必要のない衛星航法電波航法が実用化されているが,天体観測による天文航法はこれらと共栄の関係にあり,したがって航海暦の編纂は今後とも必要とされる。
天体位置表
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百科事典マイペディア 「航海暦」の意味・わかりやすい解説

航海暦【こうかいれき】

天体を観測して船の位置を知る天文航法用に編纂(へんさん)された簡易天体位置表。太陽,月,天測に利用される惑星,北極星を含む明るい恒星の毎日の位置,その他天文航法に便利な種々の表を集録。日本では海上保安庁水路部の天測暦および天測略暦が毎年発行される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「航海暦」の意味・わかりやすい解説

航海暦
こうかいれき
nautical almanac

天体暦のうち,航海に役立つ部分をまとめたもの。1年間の各天体の運行,すなわち時間表を載せている。

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世界大百科事典(旧版)内の航海暦の言及

【大航海時代】より

…まず航海技術の面について述べると,四分儀の代りにイスラム教徒から学んだアストロラーブが導入され,また簡単な測定用具としてヤコブの杖が使用された。また低緯度地域で太陽の高度から緯度を測定するための赤緯表を含む航海暦が編纂された。一方,実際の航海活動は国家の独占とされた。…

※「航海暦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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