興亜院(読み)コウアイン

デジタル大辞泉 「興亜院」の意味・読み・例文・類語

こうあ‐いん〔‐ヰン〕【興亜院】

《「興亜」はアジア諸国の勢いを盛んにすること》第一次近衛内閣の対中国政策の一環として昭和13年(1938)に発足した内閣直属機関。同17年、大東亜省設置により廃止

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「興亜院」の意味・わかりやすい解説

興亜院
こうあいん

1938年(昭和13)12月、第一次近衛文麿(このえふみまろ)内閣の際に、対中国政策の一元的指導を図るため内閣に設置された機関。日中戦争の全面化に伴って陸軍は、対中国関係業務を統轄する中央機関の設立を提唱したが、外務省側は強く反対宇垣一成(うがきかずしげ)外相は辞任するに至った。結局、外交を除く政治、経済、文化に関する政策の立案と事務処理を担う機関として興亜院は成立した。中央には総裁首相)、副総裁(外、蔵、陸、海の四相)のもとに政務、経済、文化、技術の4部、現地には華北華中など5か所に連絡部が置かれた。しかし、現地軍の特務機関が依然として政務の実権を握っており、興亜院業務の重点はもっぱら経済関係に置かれた。42年11月、大東亜省の設置に伴い廃止。

[北河賢三]

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百科事典マイペディア 「興亜院」の意味・わかりやすい解説

興亜院【こうあいん】

日中戦争の長期化に伴う対中国政策一元化のため1938年第1次近衛文麿内閣が外務省の反対を押し切って設置した内閣直属の機関。外交以外の対中国政策の樹立調整執行,在中国会社業務の監督を担当。総裁は首相,副総裁は外・蔵・陸・海の4相。中国各地に連絡部を置いた。1942年大東亜省に吸収廃止。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「興亜院」の意味・わかりやすい解説

興亜院
こうあいん

日中戦争の進展に伴って,対中国政策を一元的に統制指導するために設置された内閣直属機関。 1938年 12月,第1次近衛文麿内閣のもとで,外交を除く中国に対する政治,経済,文化政策の企画,執行,在中国会社業務の監督,行政事務の統一などを行なうため設置された。首相が総裁を,陸軍・海軍・大蔵・外務大臣が副総裁を兼任した。 1942年 11月,大東亜省の設立とともに廃止された。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「興亜院」の解説

興亜院
こうあいん

日中戦争下,中国に関する政治・経済・文化諸政策の企画執行事務にあたった内閣の外局。1938年(昭和13)12月16日設置。総裁に首相,副総裁に外・蔵・陸・海の4相が就き,その下に親任官待遇の総務長官をおいた。軍部・企画院が対中国政策統合の必要を説いて設置を要求。軍部には宇垣一成外相の和平交渉をつぶす意図もあり,同年9月に宇垣が辞任,外務省も押し切られて設置された。42年大東亜省設置により廃止。

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