日本大百科全書(ニッポニカ) 「自然主義(哲学)」の意味・わかりやすい解説
自然主義(哲学)
しぜんしゅぎ
naturalism
哲学上の自然主義は、経験科学としての自然科学の対象にされる存在、つまり「自然」に、存在一般の典型をみる見方である。要するに、規則的な因果の連関によって運動変化する時空上の存在としての自然以外には、原理上、なにも存在しないとする方法上の一種の一元的見方が自然主義と称され、1930年代末より40年代にかけてアメリカで流行をみせた。
この自然主義によれば、およそ存在しあるいは生起するいっさいは、典型的には自然科学で適用され、それ以外の領域にも連続的に拡張される方法、つまり因果的な規則性(法則)の探求という方法によって説明され、その際、たとえば目的因のように科学の因果的説明の枠を超える原理を考える必要はない。世界は自然的な原因によって生成・消滅する自然的事物から構成されるのであり、時空および因果の秩序のうちにある自然的な存在以外の存在を仮定するのは、そうした非自然的存在が観察可能でない以上、無意味である。自然的存在としての人間の研究にあたっても同様である。
ただし、カントがつとにその「弁証論」で指摘していたように、自然は原理上、そのあらゆる部分については、自然的因果によって理解できるにしても、自然「全体」を自然的に説明することは不可能である。なぜなら、「全体」としての自然の外には、もはや自然的原因者はみいだされえないからである。
[山崎庸佑]