自己免疫疾患(読み)じこめんえきしっかん

精選版 日本国語大辞典 「自己免疫疾患」の意味・読み・例文・類語

じこめんえき‐しっかん ‥シックヮン【自己免疫疾患】

〘名〙 自己抗原に対する免疫反応によって生じた抗体やTリンパ球の持続産生によって起こる疾患橋本病慢性甲状腺炎)、溶血性貧血膠原病など。自己アレルギー疾患。

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デジタル大辞泉 「自己免疫疾患」の意味・読み・例文・類語

じこめんえき‐しっかん〔‐シツクワン〕【自己免疫疾患】

自分の体の構成成分に反応する抗体リンパ球を、持続して産生してしまうために起こる疾患。慢性甲状腺炎(橋本病)・溶血性貧血膠原病こうげんびょうなど。自己アレルギー疾患。自己免疫病。→免疫自己免疫

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自己免疫疾患」の意味・わかりやすい解説

自己免疫疾患
じこめんえきしっかん

自己の構成成分に対して、その生体が免疫反応をおこす疾患。免疫はもともと、自分自身をつくっている細胞を自己(味方)と認識して守り、外から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体、および体の中にできた癌(がん)細胞などを非自己(敵)と認識して攻撃する役割を担っている。この制御システムを免疫学的寛容とよび、非自己を攻撃する反応を免疫応答とよぶ。ヒトの体には過剰な免疫応答を抑制する免疫チェックポイントが備わっているが、この免疫機構に異常が生じることによって自己免疫疾患がおきる。血清中に自分の細胞などを異物(自己抗原)と認識してつくられる抗体(自己抗体)が存在し、これが正常な細胞までを攻撃してしまうことが原因である。病変部位には免疫グロブリン沈着がみられ、また免疫グロブリン増加による高γ(ガンマ)-グロブリン血症がみられる。

 自己免疫疾患は、全身性のものと臓器特異性のものに分類され、全身性自己免疫疾患は、古くから知られる全身性エリテマトーデスSLE)や関節リウマチ(RA)ほかの膠原病(こうげんびょう)に代表される。また特定の臓器に起こる臓器特異的自己免疫疾患は、消化器では自己免疫性肝炎、循環器で大動脈炎症候群、呼吸器ではグッドパスチャー症候群腎臓では急速進行性糸球体腎炎血液では自己免疫性溶血性貧血や特発性血小板減少性紫斑(しはん)病、皮膚では円形脱毛症、筋では重症筋無力症、神経ではギラン‐バレー症候群、ほかに特発性無精子症や習慣性流産など多岐にわたる。治療として、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が有効に作用することも自己免疫疾患の特徴とされている。

[編集部]

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六訂版 家庭医学大全科 「自己免疫疾患」の解説

自己免疫疾患
(内分泌系とビタミンの病気)

 生体には、侵入した有害な異物や細菌、ウイルスを自分の体にはないものだと認識して、その侵入者を攻撃して排除する防衛網が備わっています。この仕組みを免疫といいますが、免疫の仕組みの一部が狂ってしまい、敵か味方か見分けがつかなくなり、自分自身の体に向かって攻撃をしかけてしまう病気になることがあります。

 これを自己免疫疾患といい、大きく分けて、全身にいろいろな症状が現れ、一定の臓器に決まっていない臓器非特異的(ぞうきひとくいてき)自己免疫疾患と、ある臓器に限って症状が現れる臓器特異的(ぞうきとくいてき)自己免疫疾患の2つがあります。

 前者は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどで、膠原病(こうげんびょう)としてまとめられることもあります。

 後者の代表は慢性甲状腺炎(橋本病)で、そのほか、バセドウ病、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)、1型糖尿病など、いろいろな臓器に対する自己免疫疾患があります。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自己免疫疾患」の意味・わかりやすい解説

自己免疫疾患
じこめんえきしっかん
autoimmune disease

自分自身の体内の細胞を異物と認識したために自己抗体やリンパ球が作られ,自己の細胞が攻撃されて起る組織の障害や病変。自己免疫反応の制御がきかなくなった状態と考えられる。全身性の自己免疫疾患としては全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチなどの膠原病があり,臓器特異的な疾患としては糸球体腎炎,自己免疫性溶血性貧血,橋本病などがある。いずれも発症の過程のどこかで自己抗体が検出される。複数の遺伝子群と環境因子がからみ合って起る多因子遺伝性疾患と考えられる。

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栄養・生化学辞典 「自己免疫疾患」の解説

自己免疫疾患

 自己の抗原に対して抗体ができ,その結果組織障害を起こす疾患.

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世界大百科事典(旧版)内の自己免疫疾患の言及

【エリテマトーデス】より

…自己抗原としては,DNAのほか核成分が重視されている。したがって,自己免疫疾患,自己アレルギー性疾患,免疫複合体病,また関節痛をもつことからリウマチ性疾患の一つと考えられている。症状としては,特徴的な紅斑(SLEでは鼻鞍部でつながる両頰部に出る蝶形紅斑,DLEでは顔面および手足の指の先端部にみられる不規則な紅斑),38℃以上の突発的発熱,光線過敏症(紫外線過敏症),手足の指の先端が蒼白および暗紫色に変化するレイノー現象,抜毛,口腔内アフタ性潰瘍,胸膜炎や心膜炎に伴う胸痛,呼吸困難,精神病,痙攣(けいれん),視力障害,関節痛,腎炎の症状などがあらわれる。…

【グッドパスチュア症候群】より

…反復する肺出血と急速に進行する糸球体腎炎をおもな特徴とする比較的まれな病気。その原因は不明であるが,肺と腎臓に共通する抗体(抗基底膜抗体)によってひきおこされる自己免疫疾患であると考えられている。一般に若年男子にみられる。…

【自己免疫】より

…この寛容状態が破れて,自己抗原と反応する抗体やリンパ球が生じてくることがある。このような現象を自己免疫と呼び,それが引金となって起こってくる病気を自己免疫疾患と呼んでいる。表に代表的な自己免疫疾患を挙げる。…

【免疫】より

…すでに明らかなように,このように〈非自己〉に対する防衛反応が,誤って〈自己〉に向けられれば,〈自己〉を際限なく破壊するように免疫反応は進むであろう。事実,自己に対して免疫反応が発動して,さまざまな難病(自己免疫疾患)が起こることが知られている。また免疫機構に欠陥が生じれば,生理的な反応を起こすことができずに,生体は無防備状態になってしまう(免疫不全)。…

※「自己免疫疾患」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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