自己免疫性肝炎(AIH)(読み)じこめんえきせいかんえんえーあいえいち(英語表記)Autoimmune Hepatitis

家庭医学館 の解説

じこめんえきせいかんえんえーあいえいち【自己免疫性肝炎(AIH) Autoimmune Hepatitis】

[どんな病気か]
 自己免疫異常によって肝細胞(からだの代謝を担っている細胞)を標的として慢性の炎症がおこり、肝細胞が破壊される結果、線維(コラーゲン)が徐々に増える病気です。これは慢性活動性肝炎と呼ばれる状態ですが、急性肝炎(「急性肝炎」)に似た病状がくり返されるうちに、早期に肝硬変へ進行します。
 この病気は、圧倒的に女性に多く、血液の中にいろいろな自己抗体が現われ、治療として副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンが大変よく効くのが特徴です。膠原病(こうげんびょう)の1つである全身性紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)(ループスエリテマトーデス(「全身性エリテマトーデス(SLE/紅斑性狼瘡)」))に似た病態を示すことがあるので、この病気はルポイド肝炎とも呼ばれます。
 自己抗体の種類によってつぎの3つの病型に分けられています。
①AIHⅠ型
 抗核抗体(こうかくこうたい)(ANA)、抗平滑筋抗体(こうへいかつきんこうたい)(ASMA)、抗肝細胞膜抗体(ALMA)が陽性のタイプ。
②AIHⅡ型
 肝腎ミクロゾーム(LKM)抗体が陽性のタイプ。
③AIHⅢ型
 可溶性肝抗原(SLA)に対する抗体が陽性のタイプ。
 日本では、大部分がⅠ型で、Ⅱ型やⅢ型はまれといわれます。
[症状]
 この病気に特別の症状はありませんが、全身のだるさ、疲れやすさ、食欲不振、吐(は)き気(け)などをうったえ、さまざまな程度の黄疸おうだん)が最初の症状になることがあります。関節痛、皮膚の発疹(ほっしん)や発熱など肝臓病以外の症状も現われます。病期が進行すると他の肝硬変と同様に腹水(ふくすい)、両肩や前胸部にクモ状血管腫(けっかんしゅ)がみられ、門脈圧亢進(こうしん)(「門脈圧亢進症」)の症状が出てきます。一方、症状がまったくみられず人間ドックなどの血液検査が診断のきっかけになったり、全身性紅斑性狼瘡などの膠原病の経過中に診断される場合があります。
 合併症 慢性甲状腺炎(まんせいこうじょうせんえん)、慢性関節リウマチシェーグレン症候群などの他の自己免疫疾患や門脈圧亢進(食道・胃静脈瘤(りゅう))などをともなうことがあります。
[検査と診断]
 血液生化学検査で、血清(けっせい)GOT(AST)、GPT(ALT)、膠質(こうしつ)反応のZTT値が上昇し、ウイルス肝炎を示すA型肝炎ウイルス抗体(IgM‐HA抗体)、B型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)、C型肝炎ウイルス抗体(HCV抗体)などの肝炎ウイルスマーカーが検出されない場合には、この病気が疑われます。
 とくに血清γ(ガンマ)‐グロブリン値が2.5g/dℓ以上、または免疫グロブリンのIgG値が2500mg/dℓ以上を示し、抗核抗体(ANA)、抗平滑筋抗体(ASMA)またはLE細胞現象が陽性で、血沈(けっちん)亢進を示していれば、自己免疫性肝炎であることはほぼまちがいなく、肝生検による組織学的診断が行なわれ、診断が確定されます。
[治療]
 免疫抑制作用のある副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)の内服がもっとも有効です。ただし、この治療によって骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や糖尿病が誘発されたり、悪化することがあるので注意が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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