臨界散乱(読み)リンカイサンラン

化学辞典 第2版 「臨界散乱」の解説

臨界散乱
リンカイサンラン
critical scattering

結晶はその相転移点を境にして,低温相の原子分子,またはスピン配列に高温相にはない長距離秩序が現れることがある.このような結晶では,高温相から転移点に近づくにつれ,局所的な配列の秩序が成長し,長距離隔てた点の間の相関が,しだいにいちじるしくなる.このために,転移点近傍のX線,中性子線,あるいは電子線回折像中に生じる強い散漫・散乱を臨界散乱とよぶ.臨界散乱の研究には,中性子線回折による強磁性体や反強磁性体のスピン配列の秩序の研究,X線や電子線回折による結晶の二次の相転移の研究がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臨界散乱」の意味・わかりやすい解説

臨界散乱
りんかいさんらん
critical scattering

臨界点にある液体や二相分離などの相転移における溶液のように臨界状態にあるものに,光やX線などを入射させると異常に大きい散乱が起る。これを臨界散乱という。臨界状態では密度濃度などが空間的には大きなゆらぎを起しているからである。気体や溶液で古くから知られている乳光はこの例である。

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世界大百科事典(旧版)内の臨界散乱の言及

【臨界現象】より

…例えば気相‐液相の臨界点では,密度が不安定になって密度の大きなゆらぎが現れ,その結果,光の散乱が異常に大きくなる。これは臨界散乱と呼ばれている。4Heの液体である液体ヘリウム4が超流動状態になるときには,エネルギー密度に大きなゆらぎが現れ,比熱が対数的に発散することが実験的に知られている。…

※「臨界散乱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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