臥雲辰致(読み)ガウンタッチ

デジタル大辞泉 「臥雲辰致」の意味・読み・例文・類語

がうん‐たっち〔グワウン‐〕【臥雲辰致】

[1842~1900]明治時代発明家・紡績技術者。信濃の人。日本初の綿糸紡績機、臥雲紡績機がら紡)を製作。明治20年代から30年代に掛けて広く使われた。名は「たつむね」「ときむね」とも。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「臥雲辰致」の意味・わかりやすい解説

臥雲辰致
がうんたっち
(1842―1900)

紡績技術者、ガラ紡機発明者。信濃(しなの)国(長野県安曇(あずみ)郡田多井村(現、安曇野(あづみの)市)の横山儀十郎の次男で、幼名を栄弥(えいや)といった。20歳で僧侶(そうりょ)となり、法名を智恵(ちけい)といい、26歳で臥雲山孤峰院住持となった。1871年(明治4)廃仏棄釈(きしゃく)の嵐(あらし)にあって還俗(げんぞく)し、臥雲辰致と名のった。足袋(たび)底を織る家に生まれ、子供のころからの夢であった足袋底用綿糸紡機発明に向かい、失敗に懲りず献身、1873年、粗糸(あらいと)しか製造できなかったが、機構が簡単な綿糸紡績機を完成した。ガラガラと音を出すのでガラ紡とよばれた。1877年に内国勧業博覧会に出品し、最高の鳳紋賞牌(ほうもんしょうはい)を受賞したが、模造品の続出となり、ガラ紡全盛期を呈したにもかかわらず、発明者は貧窮の底にあった。彼の例をあげて専売特許制度設定を説く勧業官僚もいて、改良機が1889年ようやく特許になった。洋式紡績の発展後も落綿(らくめん)利用の和式紡績として併存した。蚕網(さんもう)織機、計算器、測量器なども考案している。

石山 洋]

『村瀬正章著『臥雲辰致』(1965/新装版・1989・吉川弘文館)』

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百科事典マイペディア 「臥雲辰致」の意味・わかりやすい解説

臥雲辰致【がうんたっち】

発明家。信濃の足袋(たび)底問屋に生まれる。26歳で臥雲山孤峰院の住持となったが,廃仏運動(廃仏毀釈)にあって30歳のとき還俗,以後紡機改良に熱中し,1873年構造の簡単な綿紡機(いわゆるガラ紡)を完成,1877年さらに改良して第1回内国勧業博覧会に出品して1位(鳳紋賞牌)を受賞。以後連綿社を設立して器械製作を行い,ガラ紡は全国に普及したが,当時は特許法による保護がなく模造品が続出(ガラ紡事件)したため社は解散するという不遇な晩年となった。このガラ紡事件が端緒となり特許制度制定の世論が高まり,1889年ようやく特許条例が成立した。

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朝日日本歴史人物事典 「臥雲辰致」の解説

臥雲辰致

没年:明治33.6.29(1900)
生年:天保13.8.15(1842.9.19)
明治期の紡織機械の発明家。名は「たっち」とも。信濃国(長野県)安曇郡の生まれで,実家は足袋製造業。得度して臥雲山の寺の住職となるが,まもなく廃寺,還俗。手紡績の機械を改良して,水車を動力源にした機械紡績機を明治9(1876)年に発明,ガラ紡績機,臥雲式紡績機などと呼ばれた。「ガラ」というのは音に由来する。落綿やくずなどを原材料にして,あまり強度,繊度,撚りのよくない太手の糸を紡ぐものであった。用途は,木綿の敷物や実家の家業の足袋裏地などであって三河(愛知県)に定着して明治20年代にはかなり普及した。辰致は連綿社を創設して普及を図ったが,やがて西洋式の機械紡績に圧倒されてすたれていく。

(村上陽一郎)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「臥雲辰致」の解説

臥雲辰致
がうんたっち

「ときむね」とも。

1842.8.15~1900.6.29

臥雲紡績機の発明者。信濃国生れ。家業は足袋底(たびぞこ)織業で,20歳で仏門に入り,同国安曇郡の臥雲山孤峰院の住持となってまもなく還俗。1873年(明治6)臥雲紡績機(ガラ紡機)を発明し,第1回内国勧業博覧会(1877)に出品して最高賞の鳳紋賞牌を授与された。洋式紡績機が普及する90年頃までガラ紡全盛期を作りあげた。1882年藍綬褒章受章。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「臥雲辰致」の解説

臥雲辰致 がうん-ときむね

1842-1900 明治時代の実業家。
天保(てんぽう)13年8月15日生まれ。臥雲山孤峰院の住持となるが,明治4年還俗(げんぞく)。以後,綿糸紡績機の発明にとりくみ,6年ガラ紡機とよばれる紡績機を発明。10年連綿社を創設し,水車を動力源とする紡績業を開業した。明治33年6月29日死去。59歳。信濃(しなの)(長野県)出身。本姓は横山。名は「たっち」ともよむ。

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旺文社日本史事典 三訂版 「臥雲辰致」の解説

臥雲辰致
がうんたっち

1842〜1900
ガラ紡の発明者
信濃(長野県)の生まれ。1873年に日本最初の紡績機(ガラ紡)を発明し,'77年の第1回内国勧業博覧会で最高賞を与えられた。

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