臍帯(読み)さいたい(英語表記)umbilical cord

翻訳|umbilical cord

精選版 日本国語大辞典 「臍帯」の意味・読み・例文・類語

さい‐たい【臍帯】

〘名〙 胎児の臍(へそ)胎盤とをつなぐ細長い帯状の器官。成熟胎児で直径一センチメートル、長さ五〇~六〇センチメートル。内部には二本の臍動脈と一本の臍静脈が走る。胎児は臍帯の血管を通じて母体から酸素や栄養物を受け、炭酸ガス老廃物を母体の血液へと送りこむ。お産の第二期が終了した後、臍帯の搏動がなくなるのを待って、しばって切断する。せいたいへそのお。ほぞのお。〔解体新書(1774)〕

せい‐たい【臍帯】

〘名〙 へその緒さいたい

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デジタル大辞泉 「臍帯」の意味・読み・例文・類語

さい‐たい【×臍帯】

胎児胎盤とをつなぐ、ひも状の器官。中に2本の動脈1本静脈があり、母体から養分酸素を胎児に送り、胎児から母体に老廃物や二酸化炭素を送り出す。へそのお。せいたい。

せい‐たい【×臍帯】

さいたい(臍帯)

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改訂新版 世界大百科事典 「臍帯」の意味・わかりやすい解説

臍帯 (さいたい)
umbilical cord

〈せいたい〉とも読み,俗に〈へその緒〉ともいう。胎盤,羊水とともに哺乳類における胎児付属物の一つで,胎盤と胎児のへそとの間をつなぎ,胎盤を介して母体から受けた酸素,栄養物を胎児に運び,胎児から出た炭酸ガス,老廃物を胎盤を通じて母体へ運ぶ重要な唯一の血管を包含している。成熟児の臍帯は長さ50~60cm,直径1cmの索状物で羊水中に浮かぶ。臍帯には6~7回の捻転が認められ,左捻転が多い。臍帯の表面は,胎児の表面の延長である羊膜によって鞘状に包まれる。臍帯の基質は膠(こう)様の水分に富んだ結合組織のワルトン膠様質からなり,その中に2本の臍動脈と1本の臍静脈がある。臍動脈は胎児の下腹動脈の延長で,胎児の静脈血を胎盤に導く。臍静脈は胎盤からの動脈血を胎児のアランティウス静脈管および門脈を通じて下大静脈に注ぐ。臍帯血管の循環が障害(圧迫,捻転,結節など)されると,臍帯雑音を起こし胎児心拍の変動性一過性徐脈を起こす。臍帯は胎盤の中央・側方または辺縁に付着するが,まれには卵膜に付着する。また,臍帯が結ばれるのを真結節,膠質または血管の捻転により一見結節状に肥厚しているものを偽結節という。なお,爬虫類,鳥類でも,胚と卵黄囊やその他の胚体外部との接続部分を臍帯と呼ぶ。

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臍帯 (せいたい)

臍帯(さいたい)

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百科事典マイペディア 「臍帯」の意味・わかりやすい解説

臍帯【さいたい】

〈せいたい〉とも読み俗に〈臍の緒(へそのお)〉ともいう。胎児胎盤を連ねる紐(ひも)状のもので,長さは成熟胎児で48〜60cm,直径は1cmほど。外周は羊膜で包まれ,内部の柔らかいゼリー状の結合組織の中を2本の臍動脈と1本の臍静脈がからみ合いながら通る。この血管を通じて胎児の血液が胎盤に達し,母体血液との成分交換が行われて胎児体内に戻る。出生直後,臍動脈の拍動がとまると,結紮(けっさつ)して切断されるが,その残存部はのち脱落してあとにへそを生ずる。
→関連項目新生児

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妊娠・子育て用語辞典 「臍帯」の解説

さいたい【臍帯】

臍(へそ)の緒のこと。臍帯血とは、その名の通りへその緒に含まれる血液のことです。この臍帯血に含まれる「造血幹細胞」を移植して白血病などの患者さんの造血力を回復させる治療法があります。提供は「公的臍帯血バンク」と提携している産科医療機関でのみ可能です。一方、民間事業者(いわゆるプライベートバンク)は公的臍帯血バンクとは異なります。ご自身や赤ちゃん本人に万が一のことがあった場合にという目的でプライベートバンクに臍帯血を保管委託する場合は、保管方法や契約内容を慎重に確認することが重要です。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「臍帯」の意味・わかりやすい解説

臍帯
さいたい
umbilical cord

俗にへその緒という。胎児と胎盤中心部をつなぐ,長さ約 50cmの索状の組織で,胎内生活に必要な酸素,栄養物などを供給する母子間の唯一の連絡路である。内部に2本の臍動脈と1本の臍静脈および膠様組織 (ワルトン膠質) がある。臍帯の胎盤付着部は側方付着,中央付着,辺縁付着の3種のほか,まれには胎盤に付着せず卵膜に付着し,数本の臍帯血管が卵膜を通り,胎盤に到達する卵膜付着がある。臍帯付着異常,臍帯巻絡などの臍帯の異常は胎児の死亡につながる。

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普及版 字通 「臍帯」の読み・字形・画数・意味

【臍帯】せいたい

へその緒。

字通「臍」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「臍帯」の解説

臍帯

 臍の緒.長さ約50cm,直径1cmほど.

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世界大百科事典(旧版)内の臍帯の言及

【臍帯】より

…胎盤,羊水とともに哺乳類における胎児付属物の一つで,胎盤と胎児のへそとの間をつなぎ,胎盤を介して母体から受けた酸素,栄養物を胎児に運び,胎児から出た炭酸ガス,老廃物を胎盤を通じて母体へ運ぶ重要な唯一の血管を包含している。成熟児の臍帯は長さ50~60cm,直径1cmの索状物で羊水中に浮かぶ。臍帯には6~7回の捻転が認められ,左捻転が多い。…

【血管系】より

…頭頸(とうけい)部と上肢は大動脈弓からの枝が供給する。大動脈の枝の内腸骨動脈から出る1対の臍(さい)動脈は,臍帯を経て胎盤に至り,ここで母体の血液との間に物質交換が行われる。多量の酸素と養分を含んだ動脈血は,1本の臍静脈に集められ,臍帯を経て体内に入り,肝門で2枝に分かれる。…

【出産】より

…胎盤は正期産では重量450g,径15~20cm,表面積300cm2,厚さ2cmで,卵膜に覆われた胎児面と子宮壁に付着した母体面との間に絨毛群がある。胎児付属物としては胎盤のほかに臍帯(さいたい),卵膜,羊水などがある。臍帯には2本の臍動脈と1本の臍静脈が膠質(こうしつ)に包まれて存在し,長さ50cm,径1.5cmである。…

【胎児】より

…ヒトの場合は受精後8週までは,各胚葉からいろいろの器官の分化が終わるまでの期間なので,これまでを胎芽embryoといい,これ以後を胎児という。胎児は羊水中に浮いており,臍帯(さいたい)で胎盤とつながっている。胎盤は子宮壁につき,この中には胎児側から臍帯を通じて血管が入り込み,胎児はここでガス交換(呼吸)や物質交換を行って発育していく。…

【臍】より

臍帯(さいたい)(俗にいう〈へその緒〉)が胎児に付着していた部分,すなわち臍輪の跡。臍帯は臍輪によって輪ゴムのようにとりまかれているが,生後日がたつにつれて,その締めつけが強くなり,臍帯の中を走る臍動静脈も閉塞し,結合組織化して,臍帯が脱落する。…

【へその緒(臍の緒)】より

…臍帯(さいたい)の俗称。母体と胎児をつなぐものであり,これの扱いをめぐってはさまざまな習俗がみられる。…

※「臍帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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