改訂新版 世界大百科事典 「膵囊胞」の意味・わかりやすい解説
膵囊胞 (すいのうほう)
pancreatic cysts
膵臓に内腔をもった腫瘤ができる疾患の総称。病理学的立場から,囊胞の内壁が上皮でおおわれる真性囊胞と上皮がない仮性囊胞に分けられる。真性囊胞には,先天性囊胞や腫瘍性囊胞,膵石症や炎症などによる膵管の閉塞によって生じた貯留囊胞,寄生虫性囊胞などが含まれる。仮性囊胞は膵炎後や交通外傷,腹部手術後による膵損傷などによって生じるもので,頻度的には仮性囊胞のほうが圧倒的に多い。症状としては,ふつう腹痛や腹部腫瘤がみられるが,2次感染などの合併により発熱や黄疸も生じる。CT(コンピューター断層撮影)や超音波検査法などによって診断する。治療は,まず膵囊胞の原因疾患に対してなされる。一部の炎症性囊胞では自然治癒も期待しうるが,原則的には外科的治療が必要となり,囊胞切除術が試みられるが,周辺臓器との癒着が著しいときには腸管との内瘻(ないろう)化が行われる。なお,膵腫瘍の中に囊胞性膵腫瘍があり,囊胞を形成するので注意を要する。
執筆者:中沢 三郎+梶川 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報