膏薬煉(読み)コウヤクネリ

デジタル大辞泉 「膏薬煉」の意味・読み・例文・類語

こうやくねり〔カウヤクねり〕【膏薬煉】

狂言。各流。鎌倉上方膏薬練り(薬屋)が膏薬の効能比べをするが、勝負がつかず、双方の鼻の頭に薬をつけて吸い比べをして上方が勝つ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「膏薬煉」の意味・わかりやすい解説

膏薬煉 (こうやくねり)

狂言の曲名雑狂言。それぞれ名人をもって自認する鎌倉と都の膏薬煉が道で出会う。まず系図を語り合い,鎌倉方は,先祖が走って行く名馬生食(いけずき)を吸い寄せて馬吸膏薬の銘を賜ったと語れば,都方も,むかし清涼殿の庭石にするため数千人の人足で引いてきた大石が中に入らないのを吸い寄せて築地を越えさせ石吸膏薬の銘を賜ったと語る。つぎに薬種を比べ合い,鎌倉方は石のはらわた,木になる蛤(はまぐり),みみずの胴骨,都方は空飛ぶ泥亀(どうがめ),地を走る雷,雪の黒焼きなどと並べ立てる。最後に吸い比べをすることになり,鼻のあたまに膏薬をつけて吸い寄せようと争い,都方が勝つ。登場人物は都の膏薬煉と鎌倉の膏薬煉の2人で,シテは都方。系図や秘伝を重んじた中世の思想を反映するとともに,古い伝統をもつ上方と新興文化の鎌倉とを対比的に描くなど風刺もきいている。前半はせりふ,後半は所作を中心とし,終始,誇張と飛躍と奇抜さが笑いを誘発する。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「膏薬煉」の意味・わかりやすい解説

膏薬煉
こうやくねり

狂言の曲名。雑狂言。鎌倉と京都の膏薬煉が吸出し膏の効能比べをすることになり、交互に膏薬の名の由来や薬種を語り聞かせて自慢しあうが、優劣定まらず、膏薬の吸い比べを始める。鼻に膏薬のついた紙を貼(は)り、互いに吸い寄せ、吸い戻し、ねじゆがめねじ戻しするうちに、京都方(シテ)がしゃくり引きで相手を倒して勝ちとなる。前半の台詞(せりふ)、後半の動作は極端に誇張された内容で、いずれも奇想天外というほかはない。吸出し膏の名は、鎌倉方が名馬生食(いけずき)を吸い寄せた「馬吸い膏薬」、京都方がとてつもない大石を吸い付けた「石吸い膏薬」である。また薬種は雪の黒焼き、石のはらわたなどのたぐいで、流派によって異なる。

[池田英悟]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android