腹腔鏡下手術(読み)ふっこうきょうかしゅじゅつ

百科事典マイペディア 「腹腔鏡下手術」の意味・わかりやすい解説

腹腔鏡下手術【ふっこうきょうかしゅじゅつ】

内視鏡の一つで,腹部を見るための腹腔鏡を使って行う手術胆嚢(たんのう),胃,大腸小腸などの疾患を対象とする。日本では1990年に帝京大学・山川達郎教授が初めて胆嚢摘出手術を行い,1992年には慶応義塾大学医学部・大上正裕医師が初めて胃癌(がん)手術に成功した。 現在,最も普及しているのが胆嚢摘出手術で,地域にもよるが関東地方では8割以上の病院で,腹腔鏡下手術を行っている。 手術方法は,腹部に数ヵ所の穴を開けて,ドームのように内部をふくらませる。さらに,腹腔鏡を穴から差し込んで,テレビモニターで内部を映し出し,ほかの穴から入れた細長いメスを操作しながら,病変を切り取っていく。 開腹手術と比べて,患者の負担はかなり少ない。たとえば,胆石であれば手術の3日後に電車に乗って帰ることができる。胃癌でも,翌日から食事やシャワーができ,5〜7日で退院できる。 ただし,対象となる疾患には,部位などによって条件がある。たとえば,胃癌は早期の粘膜癌のみが対象となるが,大腸癌はかなりの部分を腹腔鏡下によって切除できる。 いずれにせよ,かなりの熟練を要する手術だけに,症例数が多く経験を積んだ医師のいる病院で受けるのが理想的である。→内視鏡的治療
→関連項目胸腔鏡下手術上皮内癌

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「腹腔鏡下手術」の意味・わかりやすい解説

腹腔鏡下手術
ふくくうきょうかしゅじゅつ

腹部に数か所穴をあけ、内視鏡の一種である腹腔鏡を入れて内部をみながら、別の穴から入れた器具で手術を行う方法。産婦人科などでは早くから行われていたが、1987年、フランスで胆のう摘出手術が成功、腹部消化器手術の一つとして行われるようになった。日本でも1992年(平成4)から健康保険の適用とされている。従来の開腹手術に比べ患者の身体的負担が軽いため入院が短く、回復も早いので、医療費の削減にもつながる。虫垂炎腸閉塞(へいそく)など応用範囲も広い。欧米では炭酸ガス腹壁を持ち上げるが、機械的に持ち上げる日本の方法が注目されている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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