腰鼓(読み)ようこ

精選版 日本国語大辞典 「腰鼓」の意味・読み・例文・類語

よう‐こ エウ‥【腰鼓】

〘名〙 伎楽(ぎがく)などに用いる鼓(つづみ)一種。ひもで腰のあたりに下げ、両手で打ち鳴らす。くれつづみ。こしつづみ。
西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780)一二月二五日「腰鼓一面 漆埿、腔以金墨絵」 〔荊楚歳時記

こし‐つづみ【腰鼓】

〘名〙 伎楽などに用いた鼓の一種。黄条で革を締め、長いひもをつけて腰にかけ、両手でうち鳴らすもの。呉鼓(くれつづみ)。ようこ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕

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デジタル大辞泉 「腰鼓」の意味・読み・例文・類語

よう‐こ〔エウ‐〕【腰鼓】

伎楽ぎがくなどで用いたつづみの一種。胴の中央を細くし、両端円形の革を張り、長いひもで首から腰のあたりに横につるして両手で打ち鳴らす。呉鼓くれつづみ。こしつづみ。

こし‐つづみ【腰鼓】

呉鼓くれつづみ。ようこ。

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改訂新版 世界大百科事典 「腰鼓」の意味・わかりやすい解説

腰鼓 (ようこ)

東アジアの膜鳴打楽器。中国,日本の細腰鼓(胴の中央がくびれたつづみ)の別称。細腰鼓は古代インドのものが中央アジアを経て中国南北朝(5~6世紀)に他の西域楽器とともに流伝したと考えられており,中国唐代の史料(《通典》《新唐書》など)には腰鼓,細腰鼓の両方の名称がみえる。同類のものに都曇鼓(とどんこ),毛員鼓(もういんこ),正鼓,和鼓,一(壱)鼓,二鼓,三鼓,四鼓などがある。三鼓は日本の雅楽で用いられる三ノ鼓(さんのつづみ)で,二鼓は正倉院蔵の陶製鼓胴がこれにあたるとされる。胴は唐代中国に瓦製(磁製,陶製)のものも木製のものもあった。細腰鼓は日本の雅楽に使われ,能の大鼓,小鼓の祖となったといわれる。腰鼓は片桴(かたばち),両桴,両手,片桴・片手などの奏法があり,両杖鼓の名もある。片桴・片手のものを杖鼓ともいう。宋代の杖鼓が朝鮮高麗朝に伝来し,初めは宮廷音楽に,のちに民間音楽に用いられるようになり,リズム楽器として今日では,朝鮮音楽に不可欠のものとなった。また腰鼓は,腰のあたりにつけて打つ鼓という意味からきたものともいわれ,これには円筒形の胴のものと細腰の胴のものと両種ある。腰鼓を〈くれつづみ〉〈くれのつづみ〉と訓じて,日本の伎楽(呉楽)の呉鼓(くれつづみ)を意味することもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「腰鼓」の意味・わかりやすい解説

腰鼓
ようこ

古代中国,日本のインド系の鼓。西域を経て六朝時代に中国に輸入され,細腰鼓と呼ばれたものの一種。砂時計形の胴をもつ紐締め式の太鼓で,奏者が腰のあたりに下げて打つところから腰鼓と呼ばれたらしい。考古学資料によると,桴 (ばち) を用いずに手で打奏されている。唐代には亀茲楽,疎勒楽などの西域楽のほか散楽でも用いられた。日本には推古朝に仮面音楽劇である伎 (呉) 楽の楽器として輸入された。正倉院に奈良時代に使用した胴 23個が遺存する。

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普及版 字通 「腰鼓」の読み・字形・画数・意味

【腰鼓】ようこ

細腰の鼓。

字通「腰」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の腰鼓の言及

【腰鼓】より

…東アジアの膜鳴打楽器。中国,日本の細腰鼓(胴の中央がくびれたつづみ)の別称。細腰鼓は古代インドのものが中央アジアを経て中国南北朝(5~6世紀)に他の西域楽器とともに流伝したと考えられており,中国唐代の史料(《通典》《新唐書》など)には腰鼓,細腰鼓の両方の名称がみえる。…

【鼓】より


[歴史]
 鼓はインドで発生したらしい。中国に伝わって細腰鼓(さいようこ)と総称され,胴の材に木・銅・土を用い,隋・唐代には腰鼓(ようこ),都曇鼓,毛員鼓(もういんこ),一鼓(いつこ)(壱鼓),二鼓,三鼓(三ノ鼓(さんのつづみ)),四鼓,杖鼓(じようこ)等があったが,宋代以後衰えた。杖鼓は杖(桴(ばち))で打つ鼓で,革面の片方が子牛皮,もう一方がヤギ皮というように異種を用いた。…

※「腰鼓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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