こし‐あて【腰当】
〘名〙
① すわるときに腰のうしろに当て、からだを楽にするもの。
※今鏡(1170)八「世のさがになりて、肩あて、こしあて〈略〉冠とどめなどせぬ人なし」
③ 徒歩の
武士や
修験者などが旅行用に腰につけた敷皮。
長方形の
毛皮の上に緒をつけ、うしろ腰にあてて前で結んだもの。
引敷(ひっしき)。
※太平記(14C後)二一「猿の皮を靱(うつぼ)にかけ、猿の皮の腰当(コシあて)をして」
④
近世、軍陣の際に打刀を帯にささないで、
太刀のように帯びるとき用いる、瓢形の革。これに緒を通し打刀、脇差をさして腰にあてる。〔羅葡日辞書(1595)〕
⑤ 箙
(えびら)の腰革。箙の端手
(はたて)にかけて腰にめぐらし、先端に待緒と
懸緒をつけ、箙の後緒
(うしろお)の羂
(わな)にかけて結びつけるためとする。
※
今昔(1120頃か)二五「亦取て返して、良文が㝡中
(もなか)に押宛て射るに〈略〉腰宛に射立てつ」
⑥
和船の
船体ほぼ中央の、
帆柱を立てる位置の
呼称。船体の幅や深さの基準となる重要な場所とされる。一般に荷船で用いる。〔新造御船木寄寸尺取調根帳(1858頃)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
腰当
こしあて
引敷(ひっしき)ともいい、室町時代に徒歩の武士や修験者(しゅげんじゃ)などが旅装の場合に腰につけて用いた敷き皮。長方形の毛皮に緒(お)をつけたもので、後ろ腰に当てて、前で結んで着装する。現在でもヒッツキ、ヒッツキガワ、ヒッツケ、シッカワなどとよばれ、農山村地方において、伐木などの山仕事や狩猟の際に用いられている。大きさは、普通長さ50センチメートル、幅40センチメートル前後で、その材料は、シカ、イノシシ、山イヌなどの皮が多い。現在では登山用にも使用されている。
[宮本瑞夫]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例